あなたの一番大切な人(1)
「入ってくるな」
ノックと同時に叫ぶが、相手はお構いなしで扉を開けた。
部屋に入ってきた男は、国王の服装をみても取り立てて驚かなかった。
チノパンツに綿の無地のトレーナーを着用し、どこから入手したのかわからない薄ぼろいマントを羽織っている。
これが国王かと思うと情けなさでいっぱいになるが、入室した男は持参した本をベッド脇の机に置いた。
「まぁたお出かけですかぁ。」
見た目と大きくかけ離れたまぬけ声の主は、自称世界最高の魔法使いミッドレー・ライトだった。
黒くてさらりとしたストレート髪は少し長めに切りそろえられていた。
こまめな性格で、毎日習慣となっている日課を一通り行わなければ気が済まないたちだ。
一例をあげると、起床後は、うがい歯磨きの後、洗顔・ブラッシング、ローブの手入れ、早朝ウォーキング、植木の水やり、本日のスケジュール確認、部下への点呼、そして城主の起床の手伝い。
これらを朝食前にすべて済ませなければ、朝食を採らない主義であった。
机に本を置く際、飲み終わりのグラスと空き瓶を回収し、ため息をついた。
「こんなにのーんだら、だめじゃなーいですか…」
「その間延びしたしゃべりかたをやめろ、ミッドレー。」
国王はにやにやしながら本を手に取った。いつものように史書を数冊もってきたらしい。
「こんなもの、俺はよまん。」
「よまん。じゃなくて、よむ、ですよ。言葉は正しく使わないとー。」
「それじゃあ、出かけるし、いつもみたいによろしく。」
国王は疼く下半身に耐え切れなくなり、足早に隠し戸に向かおうとしたが、ミッドレーが笑顔でその手をつかみ上げた。見上げる彼の目には心配の色が浮かんでいた。
「今日は酒場で、ちょっとした催し物があるそうですよ。こんなに飲んだんですから、立ち寄ったらダメですよぉ。」
つかまれた手を振りほどき、国王は悪戯っぽい笑みを浮かべて、足早に部屋を後にした。
ノックと同時に叫ぶが、相手はお構いなしで扉を開けた。
部屋に入ってきた男は、国王の服装をみても取り立てて驚かなかった。
チノパンツに綿の無地のトレーナーを着用し、どこから入手したのかわからない薄ぼろいマントを羽織っている。
これが国王かと思うと情けなさでいっぱいになるが、入室した男は持参した本をベッド脇の机に置いた。
「まぁたお出かけですかぁ。」
見た目と大きくかけ離れたまぬけ声の主は、自称世界最高の魔法使いミッドレー・ライトだった。
黒くてさらりとしたストレート髪は少し長めに切りそろえられていた。
こまめな性格で、毎日習慣となっている日課を一通り行わなければ気が済まないたちだ。
一例をあげると、起床後は、うがい歯磨きの後、洗顔・ブラッシング、ローブの手入れ、早朝ウォーキング、植木の水やり、本日のスケジュール確認、部下への点呼、そして城主の起床の手伝い。
これらを朝食前にすべて済ませなければ、朝食を採らない主義であった。
机に本を置く際、飲み終わりのグラスと空き瓶を回収し、ため息をついた。
「こんなにのーんだら、だめじゃなーいですか…」
「その間延びしたしゃべりかたをやめろ、ミッドレー。」
国王はにやにやしながら本を手に取った。いつものように史書を数冊もってきたらしい。
「こんなもの、俺はよまん。」
「よまん。じゃなくて、よむ、ですよ。言葉は正しく使わないとー。」
「それじゃあ、出かけるし、いつもみたいによろしく。」
国王は疼く下半身に耐え切れなくなり、足早に隠し戸に向かおうとしたが、ミッドレーが笑顔でその手をつかみ上げた。見上げる彼の目には心配の色が浮かんでいた。
「今日は酒場で、ちょっとした催し物があるそうですよ。こんなに飲んだんですから、立ち寄ったらダメですよぉ。」
つかまれた手を振りほどき、国王は悪戯っぽい笑みを浮かべて、足早に部屋を後にした。