あなたの一番大切な人(1)
 彼は小さく呪文をとなえると、周囲に何本もの黄色い細い光が現れた。

 まっすぐ伸ばした手のひらを反すとその光は細く鋭いものとなり、彼が手を大きく振るとたちまち私の身体はその光によって後ろの壁に勢いよく貼り付けられた。
 
 あまりの衝撃で意識が遠のきそうになったが、なんとか歯を食いしばって耐えていた所、彼はそのまま私の頭に手をあてて微動だにしなかった。

 しばらくすると彼は手を放し、両手を胸の前で合わせた。

 するとその手の隙間から黒い煙のようなものが現れ、瞬時に薄暗い牢獄の空間を飲み込んだ。

 次の瞬間、独房は景色を変え、昨夜のおぞましい酒場の倉庫に変わった。

 足元にも無数の酒樽が転がっており、散らかった部屋であった。

 そして目の前の男も一瞬ぐにゃりとゆれたかと思うと、昨日の憎い男に姿を変えていた。

 私は身じろぎ逃げようとしたが、光のトゲが私を縛りつけていた。

 男が一歩ずつ私に近づき優しく私の頬をさすった後、そっと胸に手を当てた。

 しかしただ手を押し付けるだけではなく、指をふくらみの形に合わせて這わせてきた。

 彼は私の反応を見ながら、ひきつった笑顔をしてみせた。

 「昨日、とんでもないことがあったみたいだね。かなり激しく相手の欲望を受け止めたみたいじゃないですか。それをもう一度思い出してみようか。それとももう一度あの貫かれる快感を味わいたいかな。」

 そういいながら、彼の手が私の乳房を鷲掴みにし、ゆっくりと揉みだした。

 私は目の前の憎い男との昨夜の光景を思い出し、強い吐き気に襲われた。

 後ろのビール棚に結び付けられた状態では、彼が身体を密着させてくるのに抗うことができず、目の前の状況を回避することができない。

 彼の手が、私のボタンに手をかけた時、私はたまらず悲鳴を上げた。

 「やめて!やだ!やだ!やだ‼‼‼」

 彼はそのまま私のシャツを両手で広げ、露わになった豊かなふくらみに口を近づけた。

 私は否応なく反応する身体の火照りに対して身構え、固く目を閉ざした。
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