あなたの一番大切な人(1)
 現場から帰宅した禁衛隊長は牢獄にとらえられた人間の調書に一通り目を通し、深いため息をついた。

 彼が予想していた通り、この件の黒幕ともいえる密売人を確保できていなかったのだ。

 -もしかすると、最初から酒場にいなかったのかもしれねえー

 しかし、あの場から五人の逃走者を出してしまったことは悔まれて仕方がなかった。

 そのうちの一人は、自分勝手で自由気ままな国王であり、もう一人は逃がす要因を作った黄金色の髪の女であったが、そのどちらもシロだと踏んでいた。

 なんとなくだが、彼女の強い視線からそういうものを寄せ付けない力強い意思を感じたのであった。

 しかし、そんな彼の予想をひっくり返すような結論を、赤いマントの男は言い出したのだ。

 「あ、その右端の塩をとってください。これ、薄味すぎて僕、食べられないんですよねぇ。ケチャップとかあったら最高なんですがぁ。」

 ベーコンをむしゃむしゃくわえながら、卵を指さしミッドレーは丁寧にお願いした。

 隊長が戻ってきてほとんどの調書が集まった頃、ミッドレーはスキップしながら城に戻ってきた。

 その時には、城の食堂は営業時間を終了していたため、彼は冷蔵庫の中のものを物色していたのだった。

 右手をぱちんとならすとたやすく炎が現れ、短時間で卵をゆでた。

 半熟状にとろけたゆで卵をむき、彼は塩を欲していたのだ。

 俺は、塩を渡しながら、先ほどの言葉に耳を疑った。

 「おめぇさん、彼女がクロだっていうんか?あの目は麻薬なんぞをやってる目じゃねーだろーよ。」

 ミッドレーは塩を受け取るとすごい勢いでボトルを振ったため、卵の上にはたっぷりと塩が乗っかっていた。

 それをおいしそうに一口で丸のみすると、何かをモグモグ言い出した。
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