あなたの一番大切な人(1)
 国王は赤いローブを風呂上りに着るのがいつもの姿だった。

 少し小麦がかった肌の色はそのローブの色とあまりマッチせず、少しちぐはぐな感じがするが、ローブの間から垣間見える手や足の筋肉から、鍛え抜かれた身体であることはなんとなく伝わってくる。

 彼は、タオルで顔を拭いて、そのあと髪をバサバサと拭きながら席に着いた。

 国王の部屋は2つに分かれており、大きなベッドと観葉植物からなる寝室と、部下からの報告を受けるときに使う書斎からなっていた。

 黒くしっかりとした革張りの回転いすに腰をかけ、彼は大理石調の机の上に置かれた報告書に目を落とした。

 「結局昨日捕まえた奴らは、ただの麻薬使用者で、金を払って受け取ったものを使用していただけとのことです。」

 隊長は少し、襟元をただし、報告書に書いたことを要約した。

 「それで…肝心の首謀者は。」
 
 彼は次の一枚、その次の一枚と書類を斜め読むだけして顔を上げた。

 隊長はどきりとした。普段何を考えているのかわからない自由奔放な国王が珍しく、的確に一番の難所をついてきたからだ。

 「わかりません。とらえた奴らはそいつの話をすると恐怖で顔をゆがめるだけです。なんなら尋問でもいたしましょうか。」

 
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