あなたの一番大切な人(1)
 彼は大股に廊下を横切ると、城門を勢いよく開けた。

 そのまま、庭を横切り馬小屋まで半ば小走りでやってきた。

 彼が馬に乗ろうとした時、後ろから二人が駆け付けた。

 「ちょっとまて、おめえどこにいくつもりだ。」

 自分の足元にいる二人の顔を冷ややかに見つめて、彼は小さく告げた。

 「牢獄に決まってるだろ。」

 ミッドレーは慌てて先ほどの自分の話を修正した。

 「ぼ、ぼくは彼女に何もしてないですよぉ。彼女が昨夜受けた仕打ちを言い当てて、麻薬をちらつかせただけです。」

 その一言が彼の逆鱗に触れた。

 「受けた仕打ちとは何のことだ!」

 あまりに大きな声だったので、馬が驚いて前脚を大きく上げた。

 愛馬の興奮に対して、国王はとっさにバランスをとり直し、身体を優しくさすって落ち着かせた。

 「すまない、どうどう…」

 ミッドレーは顔面を蒼白にしながらオロオロしていたが、隊長は冷静に自分の考えを述べた。

 「彼女がもしも麻薬の密売人とつながってるなら、これを利用することができるのではないですか?」

 彼は馬の前に立ちはだかり、自分の主君に意見をぶつけた。

 「俺が思うに、今回密売人をとり逃がしたことは一番大きなミスだろ。でもな、ミッドレーがいうように彼女が麻薬の重度な常習犯だったら、奴を利用してボスをあぶりだすことが可能だと思う。」

 目の前の国王は、愛馬の興奮が冷めるのを待ちながら、男の言葉を黙って聞いていた。

 「とらえたほかの奴を使って街中でボスをおびき出すより、あの女の方が適任だということは一目瞭然だ。」

 ミッドレーはその言葉にただ下を向いただけだった。
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