あなたの一番大切な人(1)
 彼がなぜかわからない苛立ちに支配された頃、一人独房に取り残された私は頭が割れんばかりの衝撃に苦しみ、ベッドの上でのたうち回っていた。

 ちょうど昼過ぎ頃だったが、いつもより早く禁断症状が現れていたのだ。

 目は見開かれて血管が飛び出すほど血走っていた。全身の血液が一斉に末端から中枢に集まり、手足の冷えを感じた。

 ベッドの上にはありもしない幻覚が現れていたが、彼女はただひたすら身をねじってその衝撃から逃れようとしていた。

 外で見張っていた看守は、私のうめき声に慌ててこちらに近づいてきたが、特に何かをするわけではなく、もの珍しそうにこちらを見ているだけだった。

 そう、まるで、檻の中に入れられた”たてがみを失ったライオン”を見るかのような表情だった。

 そんな彼の様子に腹が立ち、私は拳を振り上げ鉄格子に突進するとした。
 
 看守は私の気迫に身の危険を感じて飛びのき、走って元の詰所に戻った。

 私はその場で割れんばかりにガンガンする頭を両手で押さえつけて、右へ左へよろよろと歩き、再びベッドに頭から突っ伏した。

 -クスリがほしいクスリがほしいクスリがほしい-

 先ほどの赤マントの男が渡してくれなかった紫色の液体が自分の目の前を浮いていた。

 すぐに手が届く距離にあるはずなのに、それを掴もうとするとパッと消えて別の所に現れる。

 右へ左へまるであざ笑うかのように行き来する小瓶に苛立ちながら、奇声をあげた。
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