あなたの一番大切な人(1)
 新たに出てきた光景は、またしてもふわふわと夢心地だった。

 自分の両手を抑えつけている人間は、私が世界で一番嫌いな男だった。

 ゆらゆらと栗色の前髪が揺れていた。大柄な男は端正な顔立ちをしていて、心配そうにこちらを見つめていた。

 何事かを言われているのがわかるが、その内容はまったく頭に入ってこなかった。

 私は涙目になりながら、自分の上の男を押しどけようと力を加えたが、彼の力強い手が私を阻んだ。

 しかし、それとは異なり冷めたが温かみのある目が私を真剣に見つめているのがわかった。

 -なぜ、そんな眼で私をみるんだ-

 なぜかものすごく辱められているような気がして、頬にほんのりと火照りがともる。

 そんな様子を察して彼は両手を緩め、私の髪や顔を温かい手で包んだ。

 安心したのか全身に血液が戻る感覚を得た私は、そのまま瞳を閉じて眠ってしまった。

 -あぁ、神様…さようなら-
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