あなたの一番大切な人(1)
 ほんのりと心が温かくなり、手元にマントを手繰り寄せその匂いを嗅いでいたらカーテンの向こうの扉が静かに開いた音がした。

 私は姿勢を正し、カーテン越しの影を目で追った。

 -笑顔でありがとうっていうんだ-

 そう心に言い聞かせて、少し緩んだ頬でカーテンが上がるのを待った。

 が、彼女の予想に反してとんでもない奴が入ってきた。

 「お、お前は…」

 私が世界で2番目に会いたくない男が変わらず赤いマントに身を包んだ状態で登場し、その両手には大きなお盆があった。

 そのお盆にはフルーツ皿とオールブラン皿、ミルクとオレンジジュースが乗っていた。

 私が起きているのに気付き、彼はほっと胸を撫でた。

 「あ、気が付いたんですねぇ。よかったですぅ。」

 今朝のトゲはまったく抜けたのほほんとした笑顔をしたミッドレーが立っていた。

 私はどぎまぎしながら、自分が持っていたマントを思わず片手で握り、相手に突き出した。

 「これはお前のものか、もういらない。」

 ミッドレーはお盆をそばのテーブルの上に置いて、マントを笑顔で両手で受け取った。

 「あ、ありがとうございますぅ。返しときますぅ。」

 いそいそとたたむ彼の姿をみて、嫌な予感がした。おずおずと私はマントの持ち主を尋ねた。

 赤いマントの男はきょとんとして、当たり前のように答えた。

 「もちろん陛下のですよぉ。」
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