あなたの一番大切な人(1)
 私は匂いをかいで、王子の姿を想像していた自分をボコボコに殴ってやりたくなった。

 そうこういっているうちに扉が大きく開く音がした。

 乱暴な足音が部屋に響き、いきなりばさっと天蓋幕が開けられた。

 その場に立っていたのは、にっくき国王その人だった。

 「意識は戻ったか。お、大丈夫そうだな。」

 彼はそのままベッドの端に座り込み、私の方に手を伸ばした。

 私はとっさに胸元を手で隠し、彼の手から離れるように距離を保った。

 国王は私が警戒する様子をみて、ゆっくりと手をひっこめたが、とりたてて気にした様子はなかった。

 「身体の調子はどうだ、あれから。ほら、これを見てみろ。」

 そういうとポケットから紫色の液体の入ったあの小瓶を取り出した。

 私は、反射的にぞくっとしたが、そのあと身体になんの変化も起こらなかった。

 -あれ…-

 私は目の前で両手をグーパーしながら体の具合を確認した。

 いつもはそれを見ただけで、身体中の血管がプルプルと震え、身の毛もよだつ快感を強制的に得てきたのだ。

 それに先ほどまであれほど身体がけだるくて仕方なく、心の奥底からあの液体を欲していたはずだ。

 しかし今の自分は何の反応も示さなかったのだ。

 国王は、目の前の様子を確認した後、ポケットに小瓶をしまった。

 彼は私のあごをぐっと持ち、私の目を見ながら右顔、左顔と確認した。

 いきなり近づいてきた彼の顔に一瞬どきりとした。
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