あなたの一番大切な人(1)
 しかし、今日は何かが違っていた。

 自分の人生を大きく変える何かが起こるような気がしていた。

 彼はそれを楽しみにしていたが、日が暮れるまで残念ながら(乱闘も喧嘩も戦争も)何も起こらず、苦々しい思いでウィスキーを飲んでいた。

 ボトルが半分ほどになったところで、彼は棚に飾られた時計を見つめた。

 先日亡くなった前王が、他国に遠征に行った際に見つけ、時という存在を知った。

 それまで、太陽と月が気まぐれに昇ったり降りたりしているものだと思っていたし、出現場所も彼らの意思によるものだと信じていた。
  

  -まだまだ知らないことだらけだな-

 国王はすべてのものを手に入れなければ気が済まない性格であり、逆に手に入れたものへの愛着は人一倍薄い人間であった。

 よって未来に関しては意欲的に手中に収めようとするが、過去に関しては無頓着であった。

 彼は火山が噴火しようが、洪水が起きようが、竜巻が発生しようが、自国に何が起こったかなどまったく興味がなかった。
  
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