3つ星物語
ルミは私のセーラー服の胸ぐらを掴んだ。

「3つ子だからってねぇ、そんなことするのあんたしかいないでしょ。私と並んで映ったプリクラの写真が同じ顔しててもねぇ、私とつるんでるのは玖生なんですからねぇ」
 
右にも左にも逃げられない状況だった。
 
こんな時は後退(バック)だ!

「ルミに彼氏ができればと思って~。じゃね!」
 
私は彼女の一瞬の隙をつき、セーラー服のスカートを翻し、脱兎のごとく逃げた。
 
逃げ足なら誰にも負けない。
 
ルミ、可愛い顔しているのに、彼氏がいないのはもったいない。
 
そう思った私は、仏心で一本川を渡ったところにある男子校の、フェンスやら電柱やらに、WANDETの如く――ルミのプリクラを貼ったアドレスつきの、ポケットティッシュサイズのポスターを貼り付けてきたのは昨日の今日の話。
 
悪気はなかった。
 
ただ、イタズラ心があったことは認める。
 
女子高という檻の中、私はいつも楽しいことを求めている。
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