続・元殺し屋と、殺し屋






大地はチサの手を躊躇いもなく握ると、そのまま歩きだす。

驚いたけど、今日だけは大地の彼女だから。

明日からはまた、新野くんと呼ぶんだ。

…今日だけだから。




「どこ行くの?」

「秘密。
でも絶対、知紗喜ぶ」

「そうなんだー…」




どんな所でも、チサは嬉しいと思わないだろう。

だって隣にいるのは、恭真じゃないんだから。

恭真がいないと、どんなことも幸せだとは思わない。

知紗と呼ぶのも、チサの手を握るのも、恭真だけで良い。




「どうしたんだ知紗」

「何でもないよ!」




早く、明日になって…。






着いたのは、遊園地。

カップルが多いことで有名で、前に紅羽や花菜たちとトリプルデートをした思い出の場所だ。

…前に来た時は、恭真がいたのに。

今隣に、恭真はいない。

それだけで、心にぽっかり穴が開いた気分だ。




「知り合いから遊園地のチケットもらったんだ。
お昼から割引になるんだ!」

「そうなんだ。
じゃあ、沢山乗ろ!」




チサは無理矢理はしゃいだ。

恭真のことは好きだけど、今だけは忘れよう。

忘れてあげないと、ずっとチサを好きでいてくれた大地に悪いから。

今だけは…大地の彼女でいてあげよう。






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