シオンズアイズ
兵士は苦しげに眉を寄せた。

「帰っても……何もない。お袋にも妹にも、何もしてやれない」

「…どうして?」

兵士は、雲に隠れた気の弱い夕陽を見つめた。

「病気なんだ、お袋が。不治の病ってやつさ。
妹は看病のせいで結婚もできない。働き手は俺しかいないから、俺が働かなきゃ薬代が払えない。
だから俺は、好きなヤツなんて作らない。そういうのは……諦めてる 」

ここまで話して兵士は唇を引き結んだ。

それから、心配そうな顔でこちらを見つめるシオンを見て少し驚いた。

「……どうした?」

「悲しくて」

兵士は面食らった。
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