短編集『秋が降る』
機械の音が止む。

永遠とも思えるほどの間を置いて、扉が開く。
すぐに中にすべりこむ。

ボタンは1から4。

迷わず1を押すと、すぐに扉は閉まった。
一瞬、歩いてきた人の靴先が見えたが、私の姿は見られていないはず。

再び機械音とともに体がふわりとする。

下降しているのだ。

___俊秀さん、もう少し。もう少しだけ私に力をください。


軽く体が揺れ、扉が開く。

そこは、まぎれもない1階なのだろう。

非常灯以外点灯していない中では、ここが何階かすらわからない。

迷っているひまはない。
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