短編集『秋が降る』
「・・・違う」

また同じことを繰り返した。

「いいんですよ、事実を言ってください」
杉浦先生がお父さんの肩に手を置いた。

・・・事実?

お父さんがハッとしたように先生を見上げた。
「でも、先生…」

「いいんです。現実を伝えるしかないと思います」


なにを・・・?

二人の視線が私に向く。



長い沈黙の時間が流れ、やがてお父さんは私をまっすぐに見た。

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