短編集『秋が降る』
「でも、ここがスカイホームなのには間違いないわ。たくさん薬を飲まされたもの! 人体実験はウソだとは言わせない」

「・・・スカイホーム。それは合っています。私たちもそう呼んでますから。でも、正しくは・・・『須貝市立・特別養護老人ホーム』です」

「すかいしりつ・・・?」

「あなたは認知症だけでなく、糖尿病も患っています。糖尿病は喉の渇きや倦怠感など様々な症状がありますが、服薬で押さえることができるんです」

「おふくろ、自分が糖尿病ってことまで忘れたのかよ。情けない・・・」
お父さんはハンカチで目を押さえながら泣いている。

「とうにょうびょう・・・?」

杉浦先生は深くうなずく。

「ええ。服薬では血糖値の上昇が抑えられておらず、先日からインシュリンという注射をはじめたんです。これは治療であって、人体実験ではないのですよ」

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