嘘つきなあなたからの恋文。
「1年目はコタくんを考えない様に…それだけをずっと考えて過ごしてた。
でも自然に考えちゃうの。
授業中、コタくんは今何の授業かなとか
行事がある度、コタくんどう過ごしてるのかなとか……
で、思った後すぐ気づくの。
コタくんの時間はもう動いてないことを。
その繰り返し」
「……全然忘れられてないじゃん」
「うん……そうね。
だから2年目は…彼氏を作ったの」
言われてみれば私の青春はコタくんが付き物だった。
だからこそ、今度はその青春を上書きする為に他の人に目を向けることにした。
「できたんだ」
「これがね、できたのよ。高2の夏に。
同じクラスの男の子に告白されて付き合ったの」
「…好きでもないのに?」
「そうね…正直な所、ちっとも好きじゃなかったわ。
1年も付き合ったのに今じゃ名前すら覚えてないもの。
でも、コタくん以外に目を向ける為には必要だったのよ」
「不憫だ…」
「あら、あっちも浮気してたし…お互い様よ」
そう言いつつも、浮気する原因を作ったのは私なんだけどね…。
人生初めての彼氏となった彼とはキスもしたし、それ以上もした。
でも、手を繋ぐことと隣に座ることだけはしなかった。
最初は苦笑いしてた彼も、毎度も拒否されれば不満にもなる。
そして、私が自分を好きではないことに気づいていた。
そりゃ浮気をしても仕方ないことだ。
「浮気をされてショックで別れたの?」
「好きでもない人といても報われないって気付かされたのよ、今岡さんに」
「今岡さん?」
「そっ、さっき言ったでしょ?
高3の夏に会ったって。
その時、彼氏と歩いてて偶然出会して、私と目が合った瞬間、目を大きくして驚いた後彼氏の腕に抱きついている私に近づいてきて」
「近づいてきて?」
「か弱いビンタを食らったわ」
左頬を撫でる。