私の師匠は沖田総司です【下】
それなら、記憶を失ったままの方がいい。
もし、記憶が戻ってしまったら、犯人を知っている山南さんは今度こそ命を狙われる。
あの艶子さんならやりかねない。
そんなの……そんなの、絶対にいやだ。
山南さんの人生を変えた意味がなくなってしまう。
「山南さん、どんなことでもいい、アンタを襲った人間の特徴とか……」
「土方さん!!」
私は山南さんに情報を聞き出そうとする土方さんを大声で遮った。
「山南さん、無理に思い出さなくていいですよ。今は怪我を治すことを優先してください。さっ、土方さん。帰りましょう」
「おい!天宮……!」
土方さんの腕を掴み、強引に部屋を出る。
お茶をお盆に乗せた明里さんの横も通り過ぎ、家を出た。
「おい!いい加減に離せ!!」
掴んでいた腕を強く振り解かれた。土方さんが私を鋭い目で見てくる。
「天宮、一体どういうつもりだ」
「……すみません」
「謝るなら理由を話せ」
「……すみません」
土方さんの顔を正面から見れなくて、私は地面に視線を落とした。