私の師匠は沖田総司です【下】
「おまえ、この頃変だぞ。一体どうした」
投げかけられる質問に身体がピクッと跳ねる。
「……別に、何もありません」
できるだけ声が震えないように意識して、冷静に答える。
下を向いているから土方さんの表情は分からないけど、納得していない顔をしている気がしました。
しばらく町の音だけが流れていましたが、私の肩に土方さんの手が置かれました。
「何かあったんだろ?俺に話せ」
「土方さん……」
この手に縋りたくなる。
新選組内部に数人間者がいて、それに艶子さんも加担していると教えたくなる。
でも……、やっぱりできない。
さっき見た山南さんの痛々しい姿。
あの姿が頭にチラつく度に口が重くなって、真実を告げてしまいたい気持ちが、口を縛っていない風船のように萎(しぼ)んでゆく。
だから私は
「ごめんなさい……」
と、謝ることしかできませんでした。