スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

危なかった…、クラクションが鳴らなかったら確実にあのままキスをしてた。

運転しながらちらっと宝条さんに視線を向けると、本人はクッションをギュッと抱きしめながら左側の景色を眺めていて、街灯のライトで顔が赤いのが分かる。

ナビの画面を見るとシェアハウスに到着するまで後40分か…、朝から移動してあっという間に時間が過ぎるものなんだ。

「楽しい時間ってあっという間ですね」

俺と同じ気持ちを宝条さんがポツリと言い、ほんとは顔をそっちに向けたいけど運転中だから我慢して前を向く。

「次も一緒にカメラを見たいです」
「うん…、一緒に選ぼう」
「はい…、あの、荒木さん」
「どうした?」
「シェアハウスに着くまで、“こう”しても良いですか?」

宝条さんの手が俺の青いシャツの左側の裾の部分をギュッと握る感触が分かる。

「着くまで握っていいよ」
「はい…」
『さぁ、試合は7かー…』

今のこの雰囲気だけは邪魔をされたくないなって思い、俺はハンドルから左手を素早く離してラジオ放送の電源を切り、また左手をハンドルに戻した。

「ラジオ、聴かなくて良いんですか?」
「着くまで静かなままがいいし、邪魔されたくない」
「………」

宝条さんの返事はないけれど、俺の青いシャツの裾を握る力が強くなったのが分かり、スマホのナビの時間を見ると到着予定まで残り30分か。

また信号が赤になり、車が停まり、俺は顔を前に向けたままハンドルから左手を離して宝条さんが俺の青いシャツの裾をギュッと握る手に左手を重ねると、宝条さんの手がビクッとする。

「俺もシェアハウスに着くまで、“こう”する」
「はい…」

信号が青になれば離し、赤になれば手を重ね、それを繰り返しながらナビがシェアハウスに接近する矢印に切り替わって、ついに車がシェアハウスに到着した。

俺の青いシャツの裾をギュッと握る手が静かに離れ、俺はシェアハウスの駐車スペースに車を後退させながら停め、エンジンを切る。

「お疲れ」
「荒木さんこそ」
「降りて荷物を運ぶ」
「はい」

2人で車を降りてトランクからカーペットを取り出して、宝条さんが先にシェアハウスの玄関の鍵を解錠してドアを開けてくれたので、先に入って靴を脱いでリビングに入る。

「先にローテーブルを退かすか」
「私もやります」

俺はカーペットを大きいソファの側においてローテーブルを1人で動かそうとしたら、宝条さんもバックを小さいソファの上に置いて、一緒にローテーブルを持とうとする。

「私もここで過ごしますし、2人でやりましょ?」
「ありがとう」

カーペットを選ぶ時に俺も似たような言葉を言ったな…、“2人で”って言う言葉に嬉しくてニヤける口元を我慢して、2人で模様替えをした。

カーペットのサイズはメジャーで測った採寸通りで満足がデカいし、買った甲斐がある。

「荒木さんが今日いっぱい運転をしていただいてるので、お先にお風呂を使って下さい」
「お言葉に甘えて、先に使う。今日付き合ってもらって、ありがとう」

宝条さんの頭に右手をポンと置いて少し髪をくしゃくしゃして、リビングを出ていき、階段を上がって自分の部屋に戻った。
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