スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

着替えようと思ったのに意識が飛んで真っ暗になり、気づいたら弟の三斗が俺を支えて廊下を歩く。

「どうしてここに?」
「姉ちゃんが店に電話を架けてきて、兄ちゃんのことを教えてくれた」
「店は営業中だったろ」

リビングに入って大きいソファに座ると、三斗が青いTシャツを差し出したので着替える。

「今日は客も少なかったし、稔が『店より早く仁の所に行きな』って。水瀬さん達と3人でファミレスに食べに行った」
「そっか…」

倒れる前は飲みに誘われてたけど行きたくなくてガチャ切りをしたが、結果は俺が倒れたせいでせっかくの飲みの雰囲気を壊してしまったな。

「来てくれてありがとう」
「俺に礼を言うより、風呂場にいた子をケアしろよ。兄ちゃんを起こそうと側に行った時に気づいたんだけど、あの子、俺たちがくるまで泣いてたんじゃない?」
「え…」

意識が戻っても宝条さんの顔がどんな風になっていたなんて気づかなくて、俺って何してんだよと右手を顔に当てて下に俯く。

「取り敢えず飯を作るから、頭冷やしなよ」

頭に何かひんやりした物が乗ったと思い、頭を上げるとタオルの一部が視界に入ったので、改めてタオルを手に取って使いやすいように折りたたんでおでこに乗せ、ソファに横になって瞼を閉じた。

せっかくのお出かけが最後の最後で俺のせいで台無しだ…、下唇をギュッと噛み、キッチンでは三斗が何かを作っているであろう、リズミカルな音が聞こえる。

やがてリビングのドアが開かれる音が聞こえ、三斗や一美から駄目だしされ、自分の情けなさで返事が弱くなった。

「姉ちゃんは何もしてないだろ」
「私より三斗が得意だし、いいじゃない」
「……」

何とか起き上がって2人が言い合っている中で、静かに水分補給の水を飲みながら乾いた前髪の隙間から見える宝条さんの様子を見る。

本人は俺たちのやり取りに笑っているけど、本音はどうなんだろ。

『俺たちがくるまで泣いてたんじゃない?』

食事中、何度も三斗の言葉が頭に反響され、時折会話に入るも、早く倒れたことに謝りたくて、一美達に早く帰ってと言いながらご飯を食べ続けた。
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