スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

「目を覚…さな…のかと思…まし…た」
「ごめん」

三斗や一美から『泣かせないように』って言われたけど、こうなるよなと猛省する。

言葉では何度も謝罪を伝えられるけど、こんな時、大所帯の女性社員の部下の面倒を見ている水せー…、いや、“俺が”どうしたいかだよな。

右手でそっとピンクのクッションを退かして、泣いてる宝条さんを引き寄せて抱きしめ、背中を優しく叩く。

「いつもシャワーだったけど、湯船に浸かりたくて」
「……」
「これからは、きちんとご飯を食べて風呂に入る」
「……」
「一美に連絡をしてくれて、ありがとう」
「…い…」

思いを伝えながら宝条さんは何度も無言で頷き、最後は小さな声で返事をし、俺の青いTシャツに涙が溢れて染み込むのが伝わり、俺の胸元で小さく鼻を啜る音が何度も聞こえ、俺は宝条さんの背中を優しく撫でたり、小さく叩く。

どれくらい時間が経ったか分からないけど、宝条さんがゆっくり顔を上げると、綺麗な瞳は少しだけ赤いけど頑張って笑顔を作ろうとしていて、俺は抱きしめていた腕の力を解いて、右手で宝条さんの頭にポンと置いた。

「無理に笑顔にならなくていい」
「でも大分落ち着きました」
「そう?」
「お出かけを台無しにされたお詫びのリクエスト、言っても良いですか?」
「何が良い?」
「シェアハウスの近くのスーパーの、デザートコーナーにある“苺のミニパフェ”が食べたいです」
「それで良いの?」
「それ“が”良いんです」

前もあったな、“で”と“が”の一文字違いで言葉の印象が変わるってこと。

買いに行くか…、右手を離して大きなソファから立ち上がって歩き、リビングのドアノブに手をかける。

「何処か行くんですか?」

背後から声をかけられたので、顔を振り向く。

「ミニパフェを買ってくる」
「わ、私も一緒に行きます!」
「夜道、危ない」
「デザートコーナーのパフェ、種類が多いですし、私も一緒に選びたいです」
「……着替えてくるから、玄関で待ってて」
「はい!」

俺は顔を前に向いてリビングのドアノブに手をかけて開いて出て、パタンと扉を閉じるとその場でしゃがんで右手を火照る顔にあてる。

「あんな顔、狡い」

ムスッとしたり、おかえりなさいと言う笑顔に、俺が原因で泣いたり、お出かけの時の表情に、最後は『一緒に選びたいです』っていうお願いの顔にドキッとした自分がいて、それを悟られないように顔を前を向いた。

少しは火照りが落ち着いたか?と手でパタパタと扇ぎ、立って階段を上がって自分の部屋に向かった。
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