スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~

※side◯◯◯◯

side◯◯◯◯

『架けてこないで下さい!迷惑です!』
「おっと」

ガチャ切りの後、ツーツーと音が流れ、スマホの通話画面を閉じてデニムの後ろポケットにしまい、前ポケットに入れている煙草の箱を取り出し、1本取って火を点けて一服吸い、ふぅと煙を吐く。

煙が夜空に広がって、すぅっと消え、それを数回繰り返して地面に落として消えた煙草を右足のつま先でグリッと潰して、右肩に背負ったリュックの紐を改めて持ち直して、鉄の扉を開けて中に入った。

「いらっしゃいませ」
「パソコンを使いたいから、奥のテーブルに行ってもいいか?」
「飲み物は?」
「バイクで来てるから、烏龍と肉系のつまみがいい」
「用意するね」

俺は店の奥の広めのテーブル席を選び、バックを置いてノートパソコンとカメラを取り出して、それをケーブルに繋いで、カメラに撮影した写真を続々とノートパソコンにコピーをしていく。

コピーされた画像を1枚ずつパソコンで確認し、こっちはボールを蹴り上げた時に土が捲れてて構図が悪いから消去で、こっちの方が蹴り上げた瞬間とゴールキーパーが飛ぶ瞬間が丁度良いな、次々と消去と保存する写真を選んで、まだ締め切り日に余裕があるから、次はバトミントンの写真か。

パソコンで四つ葉から送られた記事のタイトルが書かれているメールを読み返し、撮影に行く日を検討し、対象となるチームの下調べを始め、選手が得意な攻撃と守備の癖を調べ、写真の構図を頭のなかでシュミレーションをしていると、机の上に飲み物とつまみが置かれた。

「お待たせ」
「ああ、ありがと。仁はこの後ここに来るか?」
「最近忙しいって言うから、暫く来ないかも」
「現場で会うしかないか」
「中々会えないのはしょうがないね」

三斗が仁の不在について苦笑しながらカウンターに戻っていく。

そういや仁にも撮影を頼まれてたなと、つまみを一口食べながらバックから手帳を取り出して、会う日を確認し、スマホを手にしてメッセージを読み返して、全部で10枚か…、手帳とスマホを机に置いて、カメラの記憶媒体の残数を確認したり、画質の設定をいじると、ここに入る前に電話を架けたひよっこと初めて会った場面を思い出した。

『チビでもひよっこでもなくて』

ひよっこはひよっこだし、ムスッとした顔が面白かったな。カメラを置いて、手帳のカバーの隙間に挟んだ名刺を取り出して、名前と所属先に視線を落とす。

「宝条真琴か。仁の部下ってのが信じられねぇが」

ニヤける口元を抑えようと、飲み物のグラスを口につけて飲んで、つまみを食べるを交互に繰り返し、名刺を手帳の隙間に戻し、空になったグラスを手にして立ち、カウンターに向けてすたすた歩く。

「おかわりをお願い」
「分かった。今日も亮二さん、機嫌が良いね」
「そうか?」
「うん」

三斗がおかわりを注ぎ、また席に戻り、飲みきって荷物を纏めて会計をして店を出て、駐輪場に向かいながら三斗の言葉を思い出す。

『機嫌が良いね』

確かにひよっこの顔は面白いし、口数少ない仁がどんな風にそいつと絡んでいるか興味があるし、ひよっこがどんなカメラを選ぶか、そっちの方が気になるし、しょうもない物を選んでたらがっかりだ。

カメラのことなら俺が自信を持って勧めるのに、そう思って電話をかけたがガチャ切りだし。ま、四つ葉に行くか、現場で会ったら聞いてみるか、またムスッとした顔をみるのも面白いし。

また口元がニヤけ、駐輪場についてヘルメットを被り、バイクのエンジンをかけて暗闇の中を走っていった。


side三輪亮二
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