スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
目的地の最寄り駅まで20分だから少しだけ荒木さんの宿題に取り組もうと、B6サイズのノートとシャープペンをだして1行づつ書き始める。

佐藤さんが『自分の時間を少しづつ書くことに触れるといいね』と言っていたし、僅かな時間を書くことに充てて、“Scoperta”に自分の企画が載ることが最初の目標だ。

20分はあっという間で、1ページの半分しか書けなかったけど、一文字ずつ届けたい言葉を書いていかなきゃ。

「えっと目的地がこっちで、受付の場所があそこだよね」

中畑さんから渡された目的地と受付場所のメモを参考にスマホのナビを見ながら歩くと、競技場の外観が見えてきて入り口に入り、受付場所の建物を目指す。

「あ、あれだ」

白い建物が受付場所になっており、係の人に名刺を見せて首にかける通行証のパスを受け取り、荒木さんを探さなきゃときょろきょろし、初めて来るし、もっと具体的な場所を聞いておけば良かった。

競技場内のスタンドに出れば分かるかなと思い、沢山ある入り口の1つの中に進むと、目の前にサッカーのグラウンドとそれを360度囲うスタンド席が飛び込んできて、言葉を失う。

野球施設とは全く違うし、芝生の色が青々としているし、私の正面のスタンド席はサッカーチームのロゴや、場所によっては椅子の色が違って、ここに観客の人達で埋まるとどんな景色なんだろうか。

「ひよっこがこんなところで何してんだよ」

背後から煙草の香りがして振り向くと、以前私のことをチビだのひよっこだのと言ってきた“口の悪い男性”が立っていた。

「ですから、ひよっこじゃないって名刺を見せましたけど!」
「編集者としてもひよっこだろ?間違ってるか?」
「そ、それはそうですけど…」

そりゃ片手で数えるくらいしか四つ葉にいないけど、でも素敵な先輩達がいっぱいいて、私を編集者として歩めるように惜しみなくアドバイスをくれるし、それに荒木さんの編集者としての姿を間近で見れて、少しでも近づけられるように自分なりにやってるし!……でも、ひよっこと言われれば荒木さんもそう思ってるのかな?宿題の抜き打ちチェックでも紙束が真っ赤になってたし、今の自分の立ち位置がひよっこという位置なんだろうか、悔しくて言い返せない。

「とにかく、カメラや編集の世界は甘くねぇぞ」

“口の悪い男性”はそう言うとブスッとした表情で私の横を通り過ぎ、私は足の力が抜けてその場に座わる。
< 130 / 224 >

この作品をシェア

pagetop