スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
荒木さんの大きな背中は私を守るようにあって、いつの間に私の所に来たんだろう。

「亮二さ、表紙の件で話があるから夜にいつもの店で待ってて」
「夜7時なら行ける」
「分かった」

荒木さんはそう言うと水野先輩達の所に行き、3人は秋山先輩のカメラを覗き込んで話をしていて、荒木さんがいなくなったこの場は私と“口の悪い男性”だけで、男性は黒い上着の胸ポケットから1枚の紙を取り出し、バックからペンを取り出してさらさらと何かを書いて、紙を私に差し出した。

「ひよっこ、次はもう少し良いカメラを使え」
「はい?!」
「いつでも連絡を寄越せ」
「え?ちょっと?!」

紙を私に押し付けると、男性はカメラを片手にすたすたと石井選手とゴールキーパーの所に向かい、私は押し付けられた紙を見るとそれは名刺で、【カメラマン:三輪亮二】とはっきり書かれていて、ほんとに“口の悪い男性”=“三輪亮二”だと、その人の正体が分かった。

名刺をじぃっと見ていると、私の手からパッと名刺が取り上げられて見上げたら荒木さんがいて、荒木さんも顔を三輪さんの名刺に向け、名刺を裏面に向けたらいきなり名刺をぐしゃりと握りつぶす。

「これ、俺が預かって良い?」
「良いですけど…」

何だか荒木さんの声が低く、怒っていると言うか怖くて体に緊張感が走ると、荒木さんはハッとしてコホンと咳払いをし、白シャツの胸ポケットに名刺を入れた。

「水野達と四つ葉に戻りな」
「はい…。カメラを貸していただいてありがとうございました」

シルバーのデジカメをそっと荒木さんに渡し、荒木さんが受け取ると私は頭を下げて水野先輩達の所に行く。

「凄い良い写真がいっぱい撮れたよ」
「俺もカメラを持ってくれば良かったと後悔するくらい、いい時間だった。宝条さんはどう?」
「数枚撮れましたが、ブレた物もあって」
「俺の見てみる?」

秋山先輩が見せてくれたのは最後のゴールを決めた過程で、石井選手が駆け足でボールに向かうところから細かく写真が進んでいき、最後のボールがネットを揺らした瞬間までもばっちりだ。

「いつも山田先輩が写真が届くのをわくわくするって言う気持ちが分かります」
「でしょ?今日のも送って四つ葉に戻ったら自慢しよ」
「そろそろ戻るから、挨拶に行こう」

3人で石井選手とゴールキーパーに挨拶をし、監督とキャプテンにも挨拶をし、荒木さんはまだ監督と話があるそうで、先に3人で競技場を出る。

そうだ、中畑さんに終わったら電話をしてねと言われてるから、バックからスマホを取り出して四つ葉にかけ、水野先輩達と帰る旨を伝え電車に乗り四つ葉へ戻っていった。
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