スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
四つ葉に向けて3人で歩いて、信号待ちで足を止めた。

「この後は姫川は街歩き?」
「ああ、どうしても取り上げたい街の通りとそこに店があるから交渉しに行く。水瀬は?」
「俺は新しいブランドが出来るから、その発表会に副編と藍山駅で待ち合わせをしてるから、こっちの道に行くね」

水瀬はじゃあと手を振って別れ、信号が変わると姫川と一緒に歩き出す。

「お前はまた編集部で原稿か?」
「ああ。今日見学させて貰ったシンクロの纏めと、6月下旬の撮影のプランを考えたいし、6月号の個人取材の内容を相手と電話で相談する約束がある」
「………新人のガキ、寂しがってたぞ」
「え?」

俺はその場で立ち止まると、姫川も立ち止まって俺に顔を向けた。

「朝からぼさっとしてるわ、お前に宿題を渡せるかどうか不安なのを笑って誤魔化してるわ、スポーツ部の奴らもお前がいないのを慣れてるから自分もその内慣れるだろうと言ってたが、お前の記事を読んで四つ葉に入ってきたんだ、せめてガキが新人の内は側で面倒を見ろよ」
「………」

姫川が言う新人のガキは宝条さんのことで、【もりや】ではそういう風には感じなかったけど、参ったな、宝条さんの事が気になって物理的に離れたのが裏目に出たか…と姫川の言葉に無言になる。

「とにかく、戻るぞ」
「分かった。宝条さんのこと、教えてくれてありがと」
「ふん」

姫川と四つ葉に戻り、2階の編集部には行かずに3階に上がって会議室のドアを開いて中に入った。

「おかえりなさい。5月号の見本誌を受け取ったので、机の上に置いてあります」
「ありがと」

田所から俺が不在中のことを聞き、上座の席に座って見本誌が入っている封筒を手にして開封し、中身を取り出して表紙を眺めるこの瞬間が編集として頑張ってやってきた実感が湧く。

静かに読んでいるとお昼の時間が終わるチャイムが聞こえ、それと同時に宝条さんが会議室に息を切らしながら入ってきて、自分の席に座り、中畑と一緒に清書に取り組む 。

俺も見本誌をそっと閉じてバックからノートとペンを取り出して、今日のシンクロの纏めを始めていると 会議室のドアが開いて水野と秋山が入り、水野は俺のそばに来て2つの紙束を差し出した。

「今日の撮影で選手とインタビューが出来ましたので6月号に反映したいのと、田所さんと一緒にこちらの資料を読んでほしいです」
「分かった。この後、自分の取材について相手と電話をして終わり次第読むから、田所から先に読んで」
「分かりました。田所さん、この資料なんですけどー…」

水野が田所と一緒に資料について内容を確認していると、会議室にいる取材班達が俺の所に来て原稿や資料の提出や相談等を順番に並び、その中に宝条さんもいて、遂に本人と3日ぶりに対峙した。
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