スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「はいは〜い、怖いことはしないこと〜」

背後から声がして私達の側に来たのは高坂専務で、高坂専務は私の腕を掴んでいる三輪さんの右手の手首を左手で掴む。

「仁の仕事の相棒として手荒なことはしたくないけど、俺の大事な可愛い部下を怖がせることは許せないな」

高坂専務は普段はにこにことしているのに、一切の感情をなくした表情と静かな怒りと低い声に、違う意味で怖さがある。

「て、ことで手を離して貰える?」
「ちっ…」

またいつものようにニコッと微笑む高坂専務に三輪さんは舌打ちすると、私の腕を掴んでいた右手を離し、高坂専務も左手を離した。

「亮二、先に帰れよ!」

あぁ、この声はと思って、バッと後ろを振り返るとはぁはぁと息を整える荒木さんがバックを手にしながらいて、私はじわりと涙目になりながら荒木さんの後ろに回った。

「……帰る」
「さっさと帰ってね〜」
「次、邪魔すると飛び込み台から落とす」
「へいへい」

高坂専務…、三輪さんの言葉に動じなくて強い。三輪さんはバイクのハンドルにかけているヘルメットを被り、椅子に跨るとエンジンをかけ始め、バイクは暗闇の中に向かって走っていき、その姿が見えなくなると、私はへなへなとその場でしゃがむと、2人も一緒に私と同じ姿勢になる。

「怪我は無くて良かったよ」
「ありがとうございます、助かりました」

高坂専務はニコッと微笑んで、私も何とか笑顔を作る。

「亮二に何か言われた?」
「名刺のことを聞かれました。荒木編集長が持ってるって答えて、そこで会話は終わってます」
「そう…」

荒木さんが短く返事すると、入り口から姫川編集長がリュックを背負って手には紙束を持って出てきて、私達の所に来た。

「おい、原稿を忘れてるぞ」
「ありがと」

姫川編集長から差し出された原稿を荒木さんが受け取り紙束をバックにしまい、私達は立ち上がった。

「帰ります」
「平気?姫川と帰る?いい用心棒になるよ」
「何で俺が新人のガキと帰らなくちゃいけねぇんだ」
「いい、俺が駅まで付き添う。高坂さん、宝条さんを助けてくれてありがとう」
「可愛い部下を助けるのは当たり前だし、三輪っちに後でパワハラとセクハラで訴えるからって言ってね」

み、三輪っち…、高坂専務は顔は笑ってるけど怖い…。

「ほら行くよ」
「はい。高坂専務、姫川編集長、お先に失礼します」

2人に頭を下げて先に行く荒木さんの所に駆け寄って、藍山駅に歩き出した。

「姫川は三輪っちのこと、どう思う?」
「荒木に任せておけばいい」
「そう?」
「ああ。水瀬といい、お前といい、お節介兄弟だな」
「え〜、“四つ葉の四兄弟”の1番上としては“凄く大切な弟”の心配はするでしょ」
「ふん。勝手にグループに巻き込んで何だと思ったが、お前らしい発想だな」
「でしょ?ま、三輪っちのカメラの腕は認めるけど、可愛い部下にちょっかい出すのは止めてほしいかな」
「同感だ。ただその辺は荒木が“消す”から心配はしてない」
「ふ〜ん。ねぇ美味しいもつ煮込みの店に行かない?」
「四兄弟の1番上のお前の奢りならいいぞ」
「喜んで。じゃあ、あっちの通りでタクシーを捕まえよ」
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