スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
藍山駅迄来ると、荒木さんが大きな溜め息を吐く。

「タクシーを呼ぶから、こっち」

タクシー乗り場で荒木さんがスマホで連絡し、10分ほど待つと1台のタクシーが到着し、私が奥に座り、荒木さんも乗り込んでシェアハウスの住所を告げ、タクシーが走り出した。

「………」
「………」

何て話しをしていいか考えが浮かばず、ずっと車窓からの景色を眺め、荒木さんも左側に顔を向けていてお互いが黙ったまま、タクシーの走行音だけしか音がしない。

本当に怖くて高坂専務が来てくれなきゃどうなってたか…、荒木さんが来た時は珍しく口調がきつく『帰れよ!』って言っていたけど、頼もしくて嬉しくて、荒木さんの大きな背中に回った時は白シャツをギュッと握りたかったけど、高坂専務達もいたから握るのを我慢した。

「シェアハウスに着いたらさ、亮二のことで話がある」
「はい」
「それまでは“こう”しよう」
「……」

荒木さんの大きな右手が私の左手を優しく包み、自分の目がじわりと涙目になったから無言で何度も頷いて、鼻を啜り、車窓の景色を見ながら過ごした。

やがてシェアハウスについて、荒木さんがお会計を済ませて2人で降り、シェアハウスの中に入った瞬間、荒木さんはバックを玄関の土間に投げ落とすと、私の方に振り返ったと同時に私を抱きしめる。

私も手に持っていた自分のバックを手放して、両腕を荒木さんの大きな背中に回した。

「怖い思いをさせて、ごめん」
「………」

怖い思いをさせたのは三輪さんであって荒木さんじゃないから、無言で顔を横に振る。

「2階の編集部の窓際にあるコピー機を使ってたら、宝条さんと亮二の姿が見えて、急いで編集部を出て階段を降りた」

だから私達の所に来た時は息切れをしていたんだ。

私を抱きしめる荒木さんの腕の力が弱くなって、荒木さんは大きな両手で私の両頬に添え、私の顔を上に向かせると、荒木さんの前髪の隙間から漆黒の瞳が私をじっと見つめているのが分かる。

「えっと…」
「亮二より俺だけのことを考えて」

荒木さんの真っ直ぐな言葉に胸がドキッとしていると、荒木さんは顔を近づけてきて私のおでこにキスをした。
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