スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「てな具合で話し合いの立ち会いは疲れた」
「くく…真面目に聞くのがお前らしいな」
「そうかな」

亮二が炭酸水の瓶に口をつけ、俺もロックが入っているグラスに口をつける。

仕事が終われば亮二と飲むようになり、行きつけのBarのお店の奥の席で向かい合ってカメラや四つ葉の話で盛り上がった。

「そうだ。俺、来月からフリーになる」
「ずっと専属でいると思ったけど」
「大分金も貯まったし、思う存分“自分の目”で撮りたいから邪魔すんなよって上司に言ったのが昨日」
「そうなんだ」

専属でいれば生活もキャリアも安泰だし、それを断ち切るなんて凄いな。

「お前はまだ続けんの?」
「続ける。本を作るという編集の世界が“好き”だから」
「カメラや編集の世界は甘くねぇが、お前なら年老いても作ってそうだな」
「亮二こそ。来月はどこで撮影?」
「1発目はバレーボール。綺麗なフォームでスパイクを打つ選手がいて、早く撮りてぇな」

漆黒の一眼カメラを手に取っていじり出しながら話す亮二を見て、どんな風に撮ってるか気になった。

「亮二の“自分の目”で撮った写真を見ても良い?」
「いいぞ」

ほらと漆黒の一眼カメラを差し出したので受け取り、液晶画面のボタンを押して写真を見る。

凄い…、“Scoperta”では載せたことがないアングルの写真がこれでもかとあり、これが亮二の“自分の目”なんだ。秋山もこれに近いアングルで撮るし、俺にはない亮二のカメラの技術の高さに惹かれている自分がいた。

「亮二」
「何だよ」
「亮二の“自分の目”で撮った写真、俺達の本に載せたい」
「男に告白されても嬉しくねぇな」
「……めげないけど」
「せいぜい頑張れば。俺は簡単に縦に振らねぇぞ」

お互いフッと笑い瓶とグラスを合わせ、その音は綺麗な音がした。

亮二と外で別れ、バイクに乗って暗闇の中に走り去ったのを見送り、黒パンツの後ろポケットにしまっているスマホを取り出して、画面をタップして通話画面から高坂さんの連絡先を選んで掛ける。

『もしも〜し、仁からの電話って珍しいな』
「1人、どうしても声をかけたい男がいる」
『へぇ、どんな男?』
「“自分の目”を持つ男」
『成る程ね。そいつの写真って見れる?』
「専属だった会社に連絡して、幾つか見せてもらう相談をする」
『良いよ。仁が自分から声をかけたいって初めてだな』
「そう?」
『ああ。俺が仁の文章に惹かれた様に、お前も何か感じたんだろ?』
「感じた。亮二の“自分の目”の写真は“Scoperta”に必要だし、きっと秋山や山田に良い影響を与えてくれる」
『良いねぇ。そいつのこと、もっと教えてよ』
「明日、いつもの店で。時間はこの時間がいい」
『オッケー』

電話を終え、タクシーを拾ってシェアハウスに向かい、自分の部屋に入って熱帯魚の餌を与える。

バックから一眼カメラを取り出してベットに座りながら自分の写真を見返し、亮二の写真と比べ、あの技術ならフリーでやっていけるだろうし、俺達の本に載せたいし、これからも亮二の写真を見続けたいな。

こんなにも惹かれたのは初めてだし、顔を縦に振って貰えるように“Scoperta”の本や俺の原稿を読ませるかと、亮二を口説き落とすためにあれこれ考えるのが楽しかった。
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