スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆取材前日と、私だけのご褒美
「宿題の2つ目をチェックしたから確認して」
「はい…」

返された紙束は真っ赤で、とぼとぼと自分の席に向けて歩きながら小さく溜め息を吐く。

容赦なく隅々まで真っ赤で、数日前に私に『好きだ』と伝えてきた人であり、キスをした人と同一人物なんだろうか?いや、でもあのキスは現実だったし、夢でもないのは確かで…、ちらっと視線を原稿を読んでいる荒木さんの口元を見て、あの唇が私の頬や唇に何度も触れて心がいっぱいになって、その日は中々寝付けられずにいたっけ。

シェアハウスでも四つ葉でも荒木さんの態度はいつも通りだし、ようやく出せた2つ目の宿題も少しは自信を持って出せたのにな…、キュッと下唇を噛んで1枚目から黙読して、ノートパソコンを立ち上げて宿題の直しに入る。

漢字の間違いは減ったけど、私には語彙力というのが足りなくて同じ言葉を使いすぎてるようで、この前佐藤さんに教えてもらったように語学アプリを入れたり、もっと本を読んで届けたい言葉を増やさなきゃ。

黙読を終えてキーボードで宿題の直しをやり始め、読者アンケートの声を読み返し、ここの段落は一旦全部消して新しくしてみようかな?そうすると前の段落のこの文章は消す?そのまま?う〜ん、頭からぷすぷすと煙が出てきそう。

「荒木編集長は明日、鷲尾さんへの取材ですよね?

「そう。夕方から試合だから午前中に会って、1時間だけ話を聞けることになってる」
「それでしたら6月号に載せる球団の広告ですが、担当者へ印刷した用紙のチェックのお願いを出来ますか?パターンは全部で5つで、前後の記事の1部を合わせて綴じたので、捲った時のイメージがつきやすく作りました」
「良いよ。確認してもらったら四つ葉に戻る」
「ありがとうございます!」

中畑さんが荒木さんに明日の取材について相談事をし、私もいよいよ取材の現場を見ることが出来るんだよね。

製作の仕事は好きだしもっと原稿に触れたいけど、取材班の先輩達がどんな風に現場でやり取りをしているか気にはなっている。

水野先輩の話をするタイミングも良かったし、ただインタビューをするだけじゃなくて雑談を交えて空気を温かくしていたから、荒木さんの取材のやり方を見れるのって早々ないから楽しみだ。

真っ赤な紙束の2枚目を捲り、3枚目を黙読していたらページの1番下にある黒のボールペンのメッセージに目がいって、顔が赤くなる。

もう、こんな書き方って狡いし、大胆だよ。

“宿題の2つ目、お疲れ様
少しづつ漢字の間違いは減っているけど
言葉をもう少し増やしていこう
頑張ったご褒美のキスするから
先に帰って待っていて”

ちらっと荒木さんを見ると、口元が少し笑っていた。
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