スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
荒木さんから何度もご褒美のキスをされ、最後は頬にちゅっと音がした。

「満足?」

さっきまで半乾きの荒木さんの前髪はすっかり乾いて、いつものように表情は分かりづらいけど、口元は笑ってるから、きっとこの状況を満足になっているのは荒木さんだけ…、ううん、私もだから悔しくて、大きいソファの上にある荒木さんのクッションを手に取って、ポンポンと何度も荒木さんを叩いた。

荒木さんは叩かれても平然としていて、なんて余裕なんだろう。

「そんなに余裕で、悔しいです」
「大人だから」

本当にこの余裕な感じをいつか崩したい。

「明日の鷲尾さんの話をしてもいい?」
「はい」

私は姿勢を正して荒木さんに向き合う。

「明日は俺は此処から野球場に直接行く。宝条さんは四つ葉に行ってからの移動で、交通費は経理課に申請だけど食事は実費扱いだから、現地で食べるか各自で用意」
「分かりました。服装は決まりがありますか?」
「常に選手や監督に張り付いて取材ならスーツが好ましいけど、派手過ぎず今の服装なら大丈夫。ただ野球場は広いし、歩くからヒールは辞めたほうがいい」
「荷物は貴重品とノートとペンですか?取材の見学の時って、私はどうしていれば良いですか?」
「俺がインタビューをしている時は距離を取って後ろにいて。必要な話を記録したい時はノートを取っていていいけど、写真に関しては俺と亮二しか撮る約束をしていないから、そこは申し訳ない」
「いいえ、いつか自分のカメラで撮影が出来るようにします」
「宝条さんの“自分の目”を楽しみにしている」

私の“自分の目”か…、どんなだろう。荒木さんの期待に応えられるように、早く自分のカメラに出会いたいな。

「取材が終わって四つ葉に戻る時は一緒に帰ろう」
「良いんですか?」

仕事が終わった帰りは一緒になることは少なくて、バラバラで四つ葉に戻ると思っていたけど、そうじゃなくて一緒だと思うと嬉しくて、にやけるのを必死に堪える。

「俺もずっと一緒に帰りたかったから、そうしたい」

ほらまた、狡い言い方をするしと思っていたら、荒木さんが私をそっと抱きしめる。

「本当は退勤の時に一緒に帰りたいけど、皆に一緒に住んでいることを秘密にしているから、目の前で『一緒に帰ろう』が言えないのはしんどい」
「最初に出した抜き打ちチェックのメッセージ、凄く嬉しくて心がいっぱいになって、この書き方、狡いってなりました」

本当にそうで、今でも心に残っている。

「その時は水瀬がいたし、やっぱ言えなくて、ああやって待ち合わせをして良かった」
「はい。私も嬉しかったので、こうやって帰る方法を2人で決めるのって良いですね」
「ああ。これからは2人で決めよう」
「はい!明日の四つ葉までの帰り、楽しみにしています」
「俺も」

抱きしめた腕の力が解け、お互い顔をゆっくりと近付けさせて、一緒に帰る約束のキスをした。
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