スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
食堂を出て、荒木さんの後に続いて歩くけど、初めて来たから道が覚えづらくて、下手したら迷子になっちゃうので、荒木さんから離れないように歩く。

ある部屋のドア前に荒木さんがピタッと立ち止まり、私に顔を向けた。

「中畑のおつかいをするから入るよ」

荒木さんはドアを数回ノックしてドアを開けて入るので、私も続いて入ると、部屋の中にいた女性達が一斉に荒木さんを見て、目をキラキラさせている。

この景色、入社当日の編集部の時と一緒でダブる…とそう思っていたら、当の荒木さんはすたすたと奥まで歩き、バックから大きい茶封筒を出して男性に手渡して何か話していると、私の方に戻ってきた。

「おつかいが終わったから四つ葉に戻る」
「は、はい」

私は周囲に失礼しますと頭を下げて2人で部屋を出て、通行パスを受付に返却する為にまた歩く。

「退勤は一緒に帰れないのがしんどい」
「でも四つ葉までの時間は一緒で嬉しいです」
「俺も」

荒木さんが大きな右手で私の頭をポンポンと叩き、私はにやけるのを知られたくなくて俯きながら歩く。

受付で通行パスを返却し、私はスマホで四つ葉にかけて中畑さんに戻ることを伝え、野球場の最寄り駅のホームのベンチに私は座り、電車を来るのを待った。

本当にあっという間だったなぁと振り返っていたら私の右頬にピタッと温かいものが触れ、体がビクッとして見上げると荒木さんが缶コーヒーを私の頬にあてていて、私の右隣に座る。

「電車が来るまでの休憩」
「ありがとうございます。頂きます」

2人で缶コーヒーを飲むと味は微糖で苦くなく、ホッとする。

「今日の鷲尾さんの取材、見学が出来てとても良かったです」
「ああ」
「ノートを必死に取ってましたが、荒木さんの声が心地よくてそっちに気を取られそうでした」
「普通に喋っているだけ」
「いいえ、鷲尾さんの表情が相手に心を開いているのが分かりましたし、何というか、とにかくあの場にいれて幸せでした」

私はそうはにかみながら言い、缶コーヒーを静かに飲むと、私の髪の毛に触れる感触がしたので荒木さんの方に顔を向けた。

「ここがシェアハウスだったら、もっと触れられるのに」
「流石に外なので恥ずかしいです」
「じゃあ電車が来るまで“こう”して我慢する」
「……はい」

荒木さんの大きな左手が私の右手を優しく包み、お互い空いてる手で缶コーヒーを飲みながら電車を待つ。

やがてホームに電車が入線してドアが開かれると、荒木さんの手が名残り惜しそうに離れ、私達は缶コーヒーの空缶をゴミ箱に捨てて電車に乗った。
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