スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◇お互いが泣いた夜
恐かった…、荒木さんからのキスは嬉しい筈なのに…、カーペットに押し倒された後のキスが恐く感じてしまい、涙が止まらなかった。

とぼとぼと歩いてどこで気持ちを落ちかせようか、まだシェアハウスの近辺の土地感覚が乏しいから、ゆっくり気持ちを落ち着かせる場所が思いつかない。

鼻を啜って歩いてると公園にたどり着き、近くにコンビニもあるから多少は明るいし、ブランコに座って小さく漕ぐ。

「帰りづらい…」

小さく呟き、どうやって帰ろうか悩む。

しかもスマホしか持ってなくて鍵を忘れる失態を犯してるし、戻ったら荒木さんに会うし、う〜んと悩むし、会った所でどう話せばいいのやら、同居していると空気が悪くなった場合の対処方法が難しい。

誰かに聞いてもらう?一美さんの顔が浮かんだけど、電話をしたら絶対に荒木さんに怒るだろうし、こういった理由を話すのもな…。

星野さん達にも私が荒木さんと同居していることは一切話してなくて、荒木さんと秘密だって約束している訳で、はぁと小さく溜め息をして俯くと見慣れた靴が視界に入り、そっと見上げると、はぁはぁと息切れして黒のジャケットを着ていない水色のシャツのままの荒木さんが立っていた。

自分の視界が滲んでへの字の口になって、また瞳からポロポロと涙の雫が零れ落ちて、鼻を啜り、ブランコの鎖を握ってる手の力を強くして俯くと、荒木さんがしゃがんで私と同じ視線の高さにして大きな右手が私の左頬にそっと触れる。

「一緒に帰ろ?」

優しい声、大きな手の温かさがじんわりと恐かった心を少しづつ消えさせていき、私はブランコから離れると、荒木さんも立ってギュッと私を抱きしめる。

私は水色のシャツに顔を埋めて、どんどん涙を零して、小さく声を出しながら泣いた。

「恐がらせて本当にごめん」
「………」

荒木さんの言葉に私は無言で何度も頷いて、荒木さんは私の背中を優しくさする。

その手つきがゆっくりで優しくて、私は気持ちが落ち着くまで泣いて、泣いて、荒木さんの温もりを感じていた。
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