スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

突然の雨で濡れた水色のシャツを脱いでパーカーに着替え、きちんと宝条さんに謝りたくて2人でリビングに移動してローテーブルの側に座る。

「あのさ」
「あの」

声が重なり、俺はコホンと咳払いをして姿勢を宝条さんに向けて思いっきり頭を下げる。

「同じ言葉しか出せないけど、本当に恐い思いをさせてごめん」

これしか出来ない自分が情けないし、宝条さんの心に消えない傷をつけてしまったし、これでシェアハウスを出たいと言われても納得しないと。

それは俺と離れる=別れの意味も含むよなと最悪な結末を想像して、でもそうなることはしたから受け入れないと…、と自分の気持ちに言い聞かせる。

「頭を上げて下さい」

宝条さんの声にゆっくりと顔を上げると、宝条さんの瞳は揺れている。

「正直、恐かったです」
「うん」
「でも元はといえば私からのキスがきっかけで」
「いや、俺も朝にしたキスも、四つ葉の帰りの電車でもしたし。それに帰った後もだ」
「大きいソファに倒された時は嬉しかったのは本当です。でも…」

宝条さんの口が一旦への字になって、また元のように戻る。

「でもカーペットに押し倒された時は、この後どうなるんだろうか、恋愛小説にも出てくる“その先”は一度も経験が無いから上手く言葉に出せなくて、ドキドキよりも恐さが先に来ちゃったんです」

宝条さんは一生懸命にその時の状況を俺に話す。

「俺のこと、恐いならもうしない」
「どうしてですか?」
「それくらいの事をした」

俺は下唇をギュッと噛み、瞼を閉じると、じわりと雫が頬を伝う。

俺ってカッコ悪いな。

想い人に自己満な気持ちをぶつけて恐がらせて、泣かせて、傷つけて…、本当にカッコ悪い。

するとふわっと抱きしめられる感覚があって、そっと瞼を開けたら宝条さんが俺を優しく抱きしめている。

「俺が恐くないの?」
「恐くないと言えば嘘になりますが、今は…今は“こう”したいから恐くないです」

一生懸命に俺の背中に腕を伸ばして優しく抱きしめる宝条さんに愛しさが増して、今頬を伝う雫の意味は悲しさに嬉しさが混じっていて、俺も腕を伸ばして宝条さんの背中に回して、自分の顔を宝条さんの左首元に埋める。

「ありがとう」
「私も荒木さんを翻弄したり、恐がってごめんなさい」
「いいや、俺が」
「いいえ、私が」
「………」
「……ふふっ」
「……ふ……」

考えてる事が一緒で、思わず笑い声が漏れ、そっとお互いの腕の力を弱めて体を離して、おでこをコツンと合わす。

「今さ、仲直り?とは言えるか分からないけど、キスをしたら駄目?」
「駄目じゃないです」
「良かった…」
「ん…」

俺がゆっくり顔を傾けて近づくと宝条さんはそっと瞼を閉じ、唇を重ね、直ぐ離して、また抱きしめた。
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