スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

良かった…、宝条さんの顔色も表情もシェアハウスのリビングで泣かせてしまった時よりも良くて、いつも俺に向ける微笑んだ顔を見せてくれた。

「これからは俺も気持ちを伝える」
「いつも前髪で表情が分からないので、伝えて下さると嬉しいです」
「頑張る」
「はい」

2人で笑い、リビングの空気が氷点下だった時よりもほんの少し温かくなっていくのが分かる。

「ふぁ…」

宝条さんが両手で口元を覆って小さく欠伸をしたので、腕時計を確認したら日付はとっくに超えていて深夜1時だ。

「朝から取材があったし、そろそろ寝よう」
「……もう少し一緒にいたいです」

宝条さんが俺の黒いパーカーの裾をギュッと握るので、参ったな…。

「2階の和室から掛け布団と枕を持ってくるから、待っていて」

そう言って立ち上がってリビングを出て、階段を素早く駆け上がって和室に入って襖を引いて、掛け布団1枚と枕を2個持って1階のリビングに戻り、それを一旦大きいソファに置いて、宝条さんと一緒にローテーブルの位置をずらして、広くなったスペースに枕を置いた。

宝条さんが横になり、俺はリビングの電気を消してカーテンの隙間から漏れる外の光を頼りに掛け布団を掛けて、中に入る。

体も顔も宝条さんに向けて見ると、宝条さんも同じように俺の方に向けていて、距離が近いけど、枕をしていると視線が合いにくいな。

「あのさ…、腕枕をしてもいい?」
「良いですよ」

俺は宝条さんが使っている枕を退かして右腕を真っ直ぐに伸ばして宝条さんの首の下に置いて、宝条さんは俺の腕にそっと頭を置く。

「重くないですか?」
「重くないし、こっちの方が視線が合いやすい」

俺は宝条さんの顔をじぃっと見つめ、腕枕にして正解だったな。

「今日の取材、鷲尾さんから荒木さんの取材を申し込みされた経緯を聞けて良かったです」
「半年も粘った」
「そんなに?!」
「ああ。色んな球団の選手の取材をしていく内に鷲尾さんの存在を知って、そこから背景を地道に調べて、この人の話しを絶対に載せたいと思って、手紙を出し続けた」
「その間も色んな取材をされてますよね?もし鷲尾さんが了承されてなかったら、どうしたんですか?」
「原稿を落とさないように取材のストックは多めにして、掲載する順番を取材しながら調整している。実際、鷲尾さんから連絡が来るまでの半年に順番を前後したのが3回あって、その度に取材をして内容を新しくkー…」
「…すぅ…」

寝ているし…、でも初めての取材見学だったし、帰ってからも色んな事をさせてしまったから、心体に来るよな。

気持ち良さそうに寝息を立てているけどー…

「俺、試されてるな」

今は一線を越えないって宣言しているし、男にならないと、ここで破ったら高坂さんがなんて言ってくるか…、そう言えば最近付き合いが悪くなってるし、夜は宝条さんといたいからお昼に声を掛けるか。

俺も段々と意識が遠くなって、左腕で寝ている宝条さんを抱き寄せて瞼をゆっくりと閉じた。
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