スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
佐藤さんと一緒に新しくなった原稿の内容を確認しながらノートパソコンに打ち込んで、荒木さんに確認してもらうように印刷をかけると、会議室のドアが開いて荒木さんが入って上座に座る。

「この1週間で6月号の原稿を揃える。先ずはA班から俺に進捗を教えて。製作は広告の部分の確認からお願い」
「はい」

全員で返事をし、改めて私は印刷された用紙を順番に纏め、荒木さんに渡して中畑さんと一緒に広告の確認を始めた。

「表紙の裏側の広告は✕✕企業で、目次の所は下のここに表示されるでしょ?」
「合っています」

中畑さんが広告を提供した企業名とページの場所と内容が書かれた一覧表を私に渡し、中畑さんが読み上げた箇所に間違えていなければチェックを付けていく。

中畑さんは広告の色の濃さもその都度確認し、名前や文字の誤字脱字がないか、文字のバランスは大丈夫なのか、2人で慎重に確認して進めた。

「中畑さん、広告の注意事項に書かれている企業名の文字とこの用紙に書かれている文字が違っています」
「どれ?あ!旧字体が正しいのか。危ない…、斎って言う文字は色んなパターンがあるから気を付けないと駄目だよね」
「確かに色んなものでありますよね。漢字の変換で出てこない場合は、どんな対処をしているんですか?」
「ここにこの筆のマークがあるでしょ?そこを押すと手書きで文字を認識して、正しい漢字に変換してくれる便利な機能があって、これで難しい漢字を入力が出来るから覚えておくと良いよ」

パソコンにこんな便利な機能があったなんて、今まで気づかなかった。

今回の6月号に使われる広告のページも多いし、これが1冊の本になって書店に並ぶんだもんな、やっぱ作る側にまわると沢山の工程を編集部の皆で取り組んでいるから、荒木さんのあの言葉が浮かぶ。

『“好き”になって欲しい、本を作るという編集の世界を』

うん、この世界を好きでいたいな。

「今からチェックした原稿を返すから、提出した人は取りに来て」

先輩達の列に並び、私も荒木さんから佐藤さんの原稿を受け取り、中身を黙読をしていると最後のページに小さく鉛筆で『橘さんのことで話があるから、先にシェアハウスで待っていて欲しい。これを読んだら消しゴムで消して』とあった。

心臓がドクンー…となり、橘さんのどんなことを話すのかな?胸のざわつきが中々収まらないけど、先ずは気持ちは切り替えなきゃ。先輩達が真剣に取り組んでいるのに、私だけこんな気持ちでいちゃ駄目だと両手でバンバン頬を叩き、荒木さんが書いた鉛筆の文字を消しゴムで消す。

「気合が入っているね」
「はい!6月号も沢山の読者に読んで欲しいので、気合が入ってます」

中畑さんとまた広告の確認を進め、会議室の時計が午後9時30分を指していたので先に会議室を出て、藍山駅に向かいながら荒木さんの伝言を思い浮かべる。

「話したいってどんなかな」

電車に乗って外の景色をぼぅっと眺め、時折電車の中吊り広告に目を向けても荒木さんの文字が浮かぶ。

シェアハウスの最寄り駅に着き、スーパーに立ち寄る気が向かず、そのままとぼとぼとシェアハウスに向かい、玄関に入ってバックをその場に投げ、靴を脱いでリビングに入り、小さいソファじゃなくて大きいソファに座って、シルバーのクッションを抱きしめて横になった。

取材の見学に行ったし、少し疲れてるから目を閉じて少し休もう。
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