スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
編集部を出ていった佐藤を追いかけようと四つ葉のビルを出て、顔をキョロキョロと動かしても佐藤の姿が見えず、どっちに行った?

駅かと思い、藍山駅迄歩いてみるもいなく、もう一度四つ葉迄の道のりを歩いて佐藤を探すも見当たらない。

「まるで宝条さんと俺と一緒だな」

宝条さんを恐がらせて泣かせ、宝条さんがシェアハウスから家出した時も、必死に探した事を思い出す。

今はスマホがあるから連絡を試みるも、電源が入って無いと言うアナウンス…、詰むなと小さく息を吐いた。

四つ葉のビルから高坂さんが出てきてつかつかと俺の所に来ると、俺の後頭部を右手で思いっきりバシッと叩(はた)く。

「痛い」
「頭は冷やしたのかよ?」
「とっくに冷えてるけど」
「お〜痛ぇ、仁をぶったのって何年ぶりだ?」
「大学1年の時だから15年振り」

まだ叩かれた部分がジンジンと痛い。

「あれも仁が悪いし、今回も自分の意見を押すのは違うだろ?」
「佐藤のバレーボールにかける情熱をずっと見ていたし、せめて疑惑になるなら6月号以降に発覚が良かった」
「こればっかりは運だし、嘆いてもどのみちあの選手の事は世間に広まるし、ストックの差し替えが効くこのタイミングが良かったんだ」

分かってる、分かってるからこそ、佐藤の原稿が2つも誰にも読まれることは無いのが悔しくて、右手をギュッと握り、下唇をギュッと噛むと、高坂さんが俺の頭に右手をポンと置く。

「泣いていい」
「……」
「今は俺しかいないから」
「……ありがと」

瞼を閉じ、声を押し殺していくつもの大きな雫が頬を伝う。

いつもならおちゃらけたり無茶振りしたりするのに、何か起これば冷静に周りを見たり、自分の立場よりも現実をみて先の事を考えたり、怒ってもきちんと相手の心情を汲み取って後でフォローしたり、高坂さんは出会った時からこういう部分は俺よりも優れてるな。
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