スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
会議室のドアが開いて荒木さんと高坂専務が持ち手が付いている箱を手にして入ってきて、上座に座り、箱をそっと机の上に置いた。

「一旦、手を休めて食べよう」
「焼きたてだし、美味しいよ」

2人が私達に気遣って場を和ませようとする。

「遠慮なく頂きます」

田所副編集長がペンを置いて、箱を両手で開封し、中身を覗いてぱぁっと笑顔になる。

「めっちゃ美味しそうですね」
「優しい店員さんが教えてくれた、おすすめの今川焼なんだって。俺も食べよ〜っと」

高坂専務も箱に手を伸ばして今川焼を持ち、一口味わって口を何度も動かすのをみて、先輩達はまだぽかんとしてると、高坂専務はゴクリと飲む。

「早く食べないと、田所に全部食べられるよ〜」
「この量なら夜食に回せますね」

田所副編集長もバクッと今川焼を一口食べている。

「俺も頂きます!」

中畑さんがノートパソコンのキーボードに置いていた手を離して席を立ち、慌てて箱の方に近付いて手を伸ばして今川焼を口に含むと、目をキラキラさせる。

「めちゃ美味しい!皆も食べないと田所さんの胃袋に吸い込まれますよ」

そこからどんどん俺も私もと箱の所に集まり、私も食べようと近づいたら、荒木さんが箱から1つの今川焼を手に取って私に差し出した。

「熱いから気を付けて」
「ありがとうございます!」

今川焼を受け取って、皆で自分の席に座って今川焼を頬張ると、熱々のクリームが口の中に広がり、冷たいケーキやデザートも好きだけど、熱いのもなんて美味しいんだろ。

先輩達も美味しそうに今川焼を食べていて、さっきまであんなにピリッとした空気や、ギスギスした雰囲気だったのに、今はシェアハウスのリビングで荒木さんと過ごしているように温かくて、少し甘くて、ちらっと荒木さんの方を見ると、荒木さんも黙々と食べている。

「ごちそうさまでした」

皆で手を合わせてゴミを片付ける。

「じゃあ俺は専務室に戻るね。仁、後は頼んだよ。いつでも来てもいいからな」
「ああ」

高坂専務と荒木さんの間の空気も今は違うのが分かり、高坂専務が会議室を出て行くと荒木さんが席を立った。

「先ずは佐藤のことで不安がらせてすまない」

荒木さんが頭を下げる姿は、あの休刊の事を私達に謝った時とダブり、荒木さんは頭を上げて席に座る。

「3日、この期間で俺が佐藤の分のページ数を別の物で書く」
「え、佐藤の原稿はどうするんですか?」

荒木さんの言葉に田所副編集長が表情を強張らせる。

「高坂さんの言う通り、雑誌に載る事を優先することが先決だ」
「ですが…」
「田所も薄々載らない事は分かってたと思うし、水野も自分の実力でページを取りたい気持ちも伝わった」
「今でも1ミリも嬉しくないですし、代わりなんて真っ平御免です。メインだって取りたいですから」

水野先輩も自分の思いを真っ直ぐに荒木さんに伝える。

「それも伝わったから、今回はストックは使わず、俺が書く。高坂さんも言っていたけど、どの道あの選手の事は世間に広まるし、差し替えが効くこのタイミングが良かったんだよと、俺もそう聞いて納得した」

私達が知らない間に、荒木さんは高坂専務とのやり取りを教えてくれた。

「ただ佐藤のケアだけは田所に任せたい」
「任せて下さい!仕事が終わったらあいつの部屋に乗り込みます」
「お願い。俺がいない間はどんな風に進めた?」
「AとBの記事で選手や企業に変わった事や気になることはないか確認し、高橋からは水泳とラグビーの話しを聞こうとしてました」
「分かった。高橋と石毛は俺の所に来て。製作も今回は佐藤の箇所をなくして、広告のページは俺が原稿を書き上げるまで空白にして欲しい」
「……分かりました。宝条さんは俺と一緒に広告の空白にするやり方と、目次の直し方を教えるよ」
「はい、宜しくお願いします!」

私はノートパソコンを持って中畑さんの隣に座り、他の先輩達も今出来ることに向けて取り組み出した。
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