スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
廊下を歩いて荒木さんに先に上がることをスマホのメッセージで連絡すると、『まだ編集部にいるから気を付けて帰って』と返事がきた。

「『分かりました。気を付けて帰ります』っと」

一息ついてスマホをバックに入れると専務室のドアが開いて高坂専務が出てきたので、私は立ち止まる。

「お疲れ様です」
「お疲れ〜。遅くまでありがとうね」
「先に上がらせていただいてるので、申し訳ないと思います」
「ううん。可愛い部下を遅くまではさせないようにしているし、俺も定時で帰りたいって言うけどおっさんたちがネチネチ言うし。参るよね」

高坂専務は朝の時はピリッとしてたけど今は違うし、普段通りだな。

「駅迄付き添うから、行こうか?」
「良いんですか?この後は予定とかあるんじゃ」
「可愛い部下と帰りたいし、そこはありがとうが嬉しいかな?」
「………ありがとうございます。お言葉に甘えます」
「勿論」

2人で階段を降りてたら2階に差し掛かり、高坂専務がピタッと止まる。

「あいつらに挨拶をしてこよう」

高坂専務がすたすたと編集部のドアの方に行くので、小走りに後をついていき、高坂専務がICカードで編集部のドアを開けたので、私はドアの扉を手で掴んで顔だけひょこっと出す。

「三兄弟には悪いけど、宝条さんと先に上がるね〜」
「お先に失礼します…」

高坂専務が高らかに言うと、編集部の中にいる姫川編集長はブスッと、水瀬編集長はニコッと微笑んで、最後の荒木さんだけは前髪で表情が分かりづらいけど背後に薄っすらと黒い物が…。

「さっさとドア閉めろ!こっちはまだ仕事中なんだ!!」
「は、はい!すいません!!」

姫川編集長の大きい声で体がビクッとし、慌ててドアを閉めて2階の階段に行き、1階に降りて四つ葉を出て、こ、恐かった…と思いながら高坂専務と藍山駅に向かう。

「藍山駅迄に付き添って頂いて、ありがとうございます」
「良いって。入社したばかりなのに会社の都合で振り回しちゃってるし、今日は恐がらせてごめんね」
「いいえ、休刊も佐藤さんの事も驚きや不安もありましたが、今は出来ることに向き合おうって思います」
「そっか…、ありがとう」

高坂専務はニコッと微笑んで、腕をうんと上に伸ばす。

「あ〜、ほんと頭の固いおっさん達の相手は疲れるし、早く引退して欲しいし、社長の座を取らないと」
「高坂専務が社長になったら、どんな四つ葉にしたいんですか?」
「先ずは社長の椅子を親父よりもデカくするのは1番目で、次は編集長3人組の活躍を長く出来るようにしたいから社内の待遇や体制を良くしたいし、もっと良い仲間を増やしたいから人事に力を入れたいね」

高坂専務は目をキラキラさせながら、四つ葉の事を話す。

「高坂専務は本当に四つ葉が大好きなんだと伝わります」
「でしょ?編集長3人組もこんな俺の無茶振りに良く付き合ってくれるし、他の部署の皆も雑誌を売ろうと営業も経理も予算を細く見てくれてるし、だからこそ1つの雑誌が欠けたら四つ葉らしくない」

確かに“Scoperta”が休刊になったら、四つ葉らしくないと言うのが高坂専務の言葉で納得する。

「私も四つ葉に貢献が出来ますか?」
「宝条さん次第だけど、確実に言えるのは宝条さんが来てからスポーツ部の雰囲気が大分良くなっているし、俺はスポーツ部を選んでくれて嬉しいよ」
「ありがとうございます」

高坂専務にそう言われると嬉しいなと喜んでたら、藍山駅の駅舎が見えてきた。

「ありがとうございます、ここで大丈夫です」
「気を付けて帰ってね。先ずは6月号の締め切りに集中してね」
「はい!」

高坂専務はタクシーに、私は駅の改札に入って行った。

電車に乗りながら、そろそろ荒木さんも四つ葉を出るかな?シェアハウスに帰ってきたら、今川焼や企画のことを話してみよう。
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