スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

「さっさとドア閉めろ!こっちはまだ仕事中なんだ!!」
「は、はい!すいません!!」

宝条さんが慌ててドアを閉めると、姫川は思いっきり溜め息を吐いた。

「ったく、高坂がいきなり入ってきて来たからなんだと思ったら、新人のガキの付き添いかよ。あいつは父親か?」
「でもこんな夜道は女の子1人は危ないし、高坂専務が一緒なら大丈夫でしょ…て、仁、どうしたの?」
「何でもない」
「そう?」

確かに1人で帰すのは抵抗があるし一緒に帰りたいけど、まさか高坂さんが一緒とは…、少し妬ける自分がいる。

「佐藤は見つかったのかよ」
「合流、出来なかった。今は田所に託してる」
「俺はあいつの態度次第でゲンコツ1発をお見舞いするぞ」
「暴力反対って言いたいけど、気持ちは分かる」

俺は手にしていた鉛筆を原稿に置いて、水瀬に顔を向ける。

「水瀬の部下達も、嫌な思いをさせて申し訳ない」
「ううん。誰だって驚くのは当たり前だし、こうして仁から気持ちを貰ったから大丈夫だよ」

水瀬が今川焼の箱を俺に見せる。

「本当に編集部の全員で良かったの?九条や姫川の分は分かるけど、俺なんて四つ葉を出てたから知らなかったのに」
「良い。公平にしたいから」
「そっか…、ありがとう。凄く美味しかったよ」
「俺も久しぶりに今川焼を味わったな」

そう、俺は【もりや】の店員さんに教えてもらったお店にもう一度行き、編集部の全員分の今川焼を買い、佐藤の事で不安がらせてすまなくて、九条さんも姫川も佐藤がビリビリに破いた原稿を拾ってくれたりと助けてくれたから、お詫びをしたかったのだ。

「佐藤は戻って来ると良いね」

水瀬がそう言うと、俺は黒パンツの後ろポケットから【退職願】の封筒を机の上に置いた。

「これはまた凄いのを仁に渡したね」
「高坂さんにも見せた。俺が預かって、佐藤に返す」
「田所の説得に縦に振らなかったらどうすんだ」
「縦に振るって信じている」

きっと田所なら佐藤のことを連れてくれると、信じている。

そう思ってまた鉛筆を握り出して、原稿用紙のマス目に文字を走らせた。
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