スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
翌日、午前中はお医者さんと栄養士さんから食事の指導が入り、私は用意されたご飯を食べるも1人だと寂しい。

テレビのリモコンでただひたすら眺め、看護師さんから薬の処方を教わって、お昼もそんな風に過ごしているけど、怪我をしている訳でも無いし暇で、おかしくなりそう。

今頃3階の会議室では荒木さんや先輩達が7月号に取り組んでいる筈だし、私もここで出来ることをしたいから、バックからノートを取り出して、ベットの上に座り、簡易テーブルにノートを開いてシャープペンで1行づつ書き始めた。

私が企画で取り上げたいこと、3つ目の宿題とは別に企画として取り上げたいことを黙々と書いていたらドアがノックされ、『はい』と答えるとドアが開かれて入って来たのは、果物がわんさか入ったカゴを手にした高坂専務で、ドアを静かに閉めると椅子の側にある机の上にカゴを置く。

そしてパイプ椅子を手に取って私の側に近付いて、椅子を開いて座った。

「顔色が良いね」
「栄養士さんが熱心に指導されたので、ご飯は食べるようになりました」
「うん、良いことじゃん」
「今回はご迷惑をおかけしましたが、こうして休められるもの高坂専務のお陰です。ありがとうございます」
「そう!ありがとうが嬉しいね。今頃四つ葉の会議室はー…」

高坂専務が会議室の様子や6月号の仮印刷もそろそろ出来上がるとのことで、ホッとする。

「ご両親がわざわざ俺の所にきたけど、気持ちが嬉しかったよ」
「お父さん達は何か話をしてましたか?」
「そうだなぁ、『1人娘だから心配だけど、こうして自分の職業に真剣に取り組んでいるし、記事が載ったら張り切って親戚に自慢する』ってお父さんが言っていたよ」

お父さんがそう言う事を言うなんて、嬉しいな。

「下で橘を待たせているし、退院祝いは美味しいお昼を食べに行くことをスケジュールに押さえてね」

それじゃあと高坂専務は部屋を出て行き、また1時間程経つと、今度は九条さんが部屋に入ってきて、2人で抱き合う。

「今、姫川編集長と街歩きの途中で、本人は下の喫煙所にいます」
「取材中なのに嬉しいです」
「退院したら、三姉妹でランチを【もりや】で食べましょうね」
「はい!」

腕が解れると、九条さんは紙袋を私に渡した。

「星野さんとその“知り合い”から、美味しいお菓子を託されたので、退院後にゆっくり食べて下さいね」
「わぁ、嬉しいです!」

それじゃあと九条さんは部屋を出て行き、どうしよう、こんなにも気持ちをいっぱい貰ってるから、ちゃんとご飯を食べようっと。

そして夕飯になり、ご飯と薬を飲んで歯を磨いて、またベットの上でノート書きをしていたらノックをされたので、看護師さんかな?と思って『はい』と返事してドアがゆっくりと開かれ、入ってきたのは荒木さんだった。

荒木さんは静かにドアを閉めて、ベットの側にあるパイプ椅子に座り、手に持っていたバックを床に静かに降ろす。

「ご飯、食べた?」
「はい」
「薬は?」
「ちゃんと飲んで、歯を磨きました」
「そっか…」

荒木さんは大きな右手で私の左頬に添え、あぁ…やっぱり温かくて、少ししか離れていなかったのに、口がへの字になる。

荒木さんは椅子から立って、ベットに腰掛けて、大きな左手を私の右頬にそっと添えて、顔を少し上にあげた。

「心配した」
「……」
「呼んでも返事が無くて…」
「……めん…なさい」
「今はキス、したい」
「は…」

“い”は荒木さんの唇に飲まれ、ほんの少しだけキスの味はしょっぱかった…。
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