スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

『こうして雑誌に掲載されるのが嬉しくて』

そんな風に言われたら、もっと好きになるし、もっと愛おしくなるのに気づいていない宝条さんに、唇を重ね、またふかふかなベットにゆっくりと押し倒し、その反動のせいなのか、ベットの隅に置いた6月号の仮印刷の紙束がバサッと落ちる音が聞こえたけど、拾っている場合じゃない。

今は宝条さんを感じたくて、この後会えない分を“充電”したいから、沢山唇を求めた。

時折聞こえる熱い吐息と宝条さんの小さい声、差し込んだ熱が口の中で絡み合って奏でられる水の音が俺たちしかいない病室に響く。

唇を離せば宝条さんの頬を啄み、耳朶やおでこにも唇を落とし、その度に宝条さんは体をビクッと反応したので、宝条さんの顔を覗くと本人は苺のように真っ赤だ。

「“充電”、出来ました?」
「まだ」
「え?」
「まだ足りない…」
「わたしmー…」

“も”というのを俺の唇で飲み込んで、自分の体重をかけて宝条さんの体に覆いかぶさり、それぞれの両手で宝条さんの手を掴み、指を絡め、顔の角度を変えながらお互い唇を求め合う。

ここがシェアハウスの俺の部屋だったら確実に一線を超えそうな雰囲気で、病室なのが悔しいな。

『まもなく消灯の時間となります。面会の方はー…』

まだ“充電”したいと思いながら唇と手を離して体を起こし、白シャツの袖で唇を拭い、ふぅと熱の籠もった息を吐き、宝条さんも体を起こして真っ赤になっている顔を両手で仰ぐ姿に俺はフッと笑う。

「笑わないで下さい」
「ごめん」

俺は床に落ちた仮印刷の用紙を拾って、それを整理して茶封筒に入れた。

「明日も来る」
「はい、待っています」

だからその潤んだ瞳で見上げられると、病室から出にくい。

「お休み」

俺は右手で宝条さんの前髪を少しかきあげておでこにそっと唇を触れて、荷物を持って病室を出ていった。

廊下を歩いてお手洗いの近くに差し掛かり、ふと亮二が俺に言った『鏡を見てこいよ』の言葉を思い出し、中に入って洗面台に映る自分の口元をみたら、うん、ついていない。
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