スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
荒木さんの下の名前が仁ってー…、嘘でしょ?!と、荒木さんの顔をじぃっと見ると、荒木さんがスーツの外ポケットから1枚の紙を取り出して私に渡してきたので受け取ると、そこにははっきりと『四つ葉出版社スポーツ部編集長:荒木仁』と書かれてある名刺で、中畑さんが私が仁さんに感想を伝えたいと話しをした時に何故か荒木さんを見ていたのを思い出した。

えええっと、荒木さんは“シェアハウスの同居人”で“上司”で、“ツチノコ”で“幸運が訪れる”というワードに、更に“私の憧れの人”ってこと?!今日1日で色んなワードが追加されていくから、うう…思考回路がショートしそう。

「あのさ、やり辛いんだったらシェアハウスから出てもいい」
「どうしてですか?」

私との距離を離そうとする言い方に戸惑うけど、何だか離れてはいけない気がするし、まだ編集者としてのノウハウや読者を惹きつけられるようになる教えを憧れの人、ううん、荒木さんから教わりたいし、面接の時に自分から言った言葉を思い出す。

「シェアハウスから出ていきません。荒木さんの傍で編集者としていっぱい学びたいから、離れたくないです」

まっすぐ荒木さんに向けて言うと、荒木さんの大きな右手が私の頭にポンと置いた。

「ありがとう」

そう言うと荒木さんは手を離してフッと笑い、その瞬間、暖かい春の風が私たちを包んだ。

「俺は行くとこがあるから、もうお店に戻りな」
「はい」

荒木さんは立ち去り、私は居酒屋の個室に戻るんだけれど、頭に荒木さんの大きな手が触れた感触がずっと残り続け、荒木さんの正体を知れたそんな1日だった。
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