スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◇休刊のピンチと、ケチャップの味

四つ葉出版社のスポーツ部に入社をして2週間程が過ぎ、今日は荒木さんがチェックした下書きの原稿の清書するという仕事を任され、ノートパソコンを使いながら原稿を打ち込んでいく。

「ここのページの写真、アングルが上すぎる。撮り直せ」
「分かりました…」
「次ミスったらカメラは貸さねぇし、原稿のページを減らす」
「今から撮り直しに行ってきます!!姫川編集長も残り5ページの清書を早く仕上げて下さい!青木印刷所から催促されてますよ!」
「うるせぇ、さっさといけ!」

私が座る背後からタウン情報部の姫川編集長と女性社員のやり取りが聞こえ、何だかこの2人ってずっとこんな感じなんだけど、製作班の中畑さんやその隣に座る田所副編集長は黙々とパソコンを使っていて、タウン情報部のやり取りの声には気にならないのかな?

お昼は手作り弁当を机の上で広げ、食べ始める。まだお給料が入らないし、コンビニって高いし、スーパーも割引シールが貼られてある商品ばかりを選んじゃうなと茹でて味付けが塩のみという人参をぽりぽりと食べ、今日は何時に帰れるかなぁ。

編集部は定時という概念が無く、特に取材班は試合が夜になればそれに合わせて移動するし、製作も取材班の原稿の内容が場合によって変更となると一からやり直すのもあって、編集部を出るのも夜8時や10時前なんてのもあったし。

まだ私や女性社員には0時を超えないよう配慮をしてくれているけど、中畑さんや他の男性社員は机に突っ伏して寝るか、床に段ボールを敷いて寝泊まりしてるって言ってたな。

お弁当を食べ終え、再度原稿の清書に取り掛かる。この原稿はB班の佐藤さんが取材したバレーボールのチームがテーマで、私は今まで学校の体育の授業だけしかバレーボールに触れたことがなかったから、チームの組織や練習風景、特に監督や選手のインタビューの文章は読み応えがある。

「今度バレーボールの試合を見てみようかな」
「佐藤が書いた原稿?」

田所副編集長が私の方に顔を向ける。

「はい。このインタビューの部分の所、読み応えがあります」
「根気よく監督や選手の取材を行ったし、最後は銭湯まで一緒に行ったって」
「へぇ佐藤さん、かなりやりますね」

中畑さんもキーボードを打ちながら会話に入る。

「最初は相手との会話の間合いに苦戦してて、1回荒木編集長に録音を聞いてもらい、駄目だしいっぱいされてさ、逆に荒木編集長の録音を聞いて凄いへこんでた。俺も荒木編集長の録音を聞いたら自分との差に悔しさが出たな」
「俺も聞いてみたいですね。製作だと原稿なんで、実際のやり取りが気になります」
「荒木の実力は俺と水瀬より凄えから、1回聞いただけじゃモノに出来ねぇな。5万回聞け」

振り返ると姫川編集長はパソコンの画面を見ながらキーボードを打ち続けていて、姫川編集長ってさっきまでは女性社員に対して口調がキツかったのに、荒木さんに対してはそうでもない。

田所副編集長の机の上にある電話機が鳴り、田所副編集長は受話器をあげた。

「四つ葉出版社の田所ですー…、お疲れ様です、はい、明日の10時ですか?確かB班は午後から取材があるので、午前は支障は無いですー…、分かりました、中畑さんにも伝えます。失礼します」

田所副編集長が受話器を置くと、こちらに顔を向ける。

「荒木編集長からの電話で、明日10時に全員3階の会議室に集合だって。中畑さんには進行スケジュールの資料も一緒に持ってきて欲しいって」
「分かりました」

会議か…、ずっと編集部の中で原稿に携わってたから、どんな内容なんだろう?
< 28 / 217 >

この作品をシェア

pagetop