スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
お昼はコンビニで買ってきたおにぎりとお茶を頬張り、話題は7月号の表紙の写真についてだ。

「前回の三輪さんが撮った写真、好評価ですね」
「あれだけ荒木編集長と話し合ったので、次は誰の写真か楽しみです」

中畑と山田が写真の事で盛り上がる中、俺はちらっと秋山を見る。

本人は一眼カメラとノートパソコンをケーブルで繋いで眉間の皺を深く寄せながら液晶画面を見て、キーボードを打ったり、マウス操作をして作業をしていた。

そして小さく息を吐いて静かにノートパソコンを閉じて会議室を出たので、俺も席を立って会議室を出て秋山を探すと、本人は廊下の隅でしゃがんで壁に寄りかかっているので、俺は秋山の元に行く。

「どうした?」
「“自分の目”で撮りたいのに、上手くいきません」

俺は秋山の対面にしゃがんで視線の高さを合わすと、本人の瞳は揺れている。

「“休刊”にしたくないから気合い入れて撮りたいのに…、昨日撮った写真が全部駄目な気がします」

秋山は唇をギュッと噛み、俯く。

いつも“自分の目”で素晴らしい写真を撮る秋山がこんなにもプレッシャーを感じている姿に、俺は右手で秋山の頭に手を置いた。

「今は俺しかいないから、泣いていい」
「はい…」

俺も佐藤を探して四つ葉を出た時に、佐藤の原稿が2度と誰にも読まれないことに悔しくて高坂さんの前で泣いたな。

その時も高坂さんがこうして側にいてくれたから泣けたし、今は俺が高坂さんの立場で、秋山が声を押し殺して静かに泣き止むまで、廊下で過ごす。

「俺も入社した時、高坂さんから駄目出しを沢山された」
「そうなんですか?」

俺はそっと手を離して、秋山は自分の服の袖で目元を拭い、鼻を啜る。

「『全然“自分の目”で撮れて無い』でカメラを突き返されて、ムカついて毎回高坂さんの取材に同行させてもらった」

そこから俺は自分がどんな風にカメラの技術をあげていったか、高坂さんとの過去の取材を交えて秋山に話しをした。

「明日、夜に予定はある?」
「特に無いです」
「夜7時にS駅近くにある✕✕喫茶店に来て」
「そこで今みたいな話し合いですか?」
「来れば分かる。これから高坂さんと石井選手の所属するチームに行くけど、秋山は来る?」
「………行きます。“自分の目”が鈍るのは嫌なんで、撮ります」

さっきまで揺れていた瞳が真っ直ぐ俺を捉えているから、大丈夫そうだな。

「明日は俺も午後から取材や会議だから、直接喫茶店にいて」
「はい」

俺達は立ち上がり、会議室へ戻っていった。
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