スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
グラウンドに出ると選手と監督がウォーミングアップを始め、秋山はバックから一眼カメラを取り出してレンズのパーツを取り付けてファインダーを覗き、顔を離してまたレンズの目盛りを調整する手順を繰り返す。

『“自分の目”で撮りたいのに、上手くいきません』

秋山がこれをどう自分で克服するか、明日夜7時に待ち合わせをして、その時に克服のきっかけを掴めばと思う。

田所も水野も自分のカメラで練習風景を撮影していて、田所が俺の所に来て一眼カメラを差し出した。

「久しぶりに荒木編集長の“目”を見させて下さい」
「良いよ」

田所の一眼カメラを受け取り、俺はレンズの調整はせず、選手達の動きに注視し、キャプテンが高く蹴り上げられたボールを胸でキャッチする仕草、そのボールを地面に落としてドリブルして相手の守備をかわして走り進む姿と、キャプテンに抜かされた選手の表情を収める。

そして林選手が立ちはだかるゴールエリアにキャプテンが来ると後方から凄い勢いで走る石井選手を捉え、撮影ボタンを押し、キャプテンから真横に送れたパスを止まることも無く左足で石井選手が蹴り、ボールは林選手の左手を越えて白いネットが揺れた。

その過程は連写で捉えたので、顔を離して液晶画面を操作して振り返る。

「撮れた」

田所に返すと本人が液晶画面を覗き、目を見開くので、水野と秋山は田所の所に来て液晶画面を見た。

「俺とは全然違う写りだ」
「荒木編集長の“目”って凄い」
「………」

水野と田所はずっと俺の写真で盛り上がってるが、秋山はずっと無言で液晶画面を見ていて、また一眼カメラを持って練習風景を撮り始めた。

見学を2時間程させてもらい、秋山はまだ残るとのことで俺は田所と水野の3人で帰り支度を始め、駅迄3人で歩く。

「秋山が残るなんて、初めてですね」
「そうですよね。いつも俺と行動していますけど、帰りがバラバラなのは初めてです」
「秋山は妥協しない奴だから、納得する迄1人がいい」

今日はとことん撮影してもらい、明日の夜もそうさせようと考える。

駅で2人と別の路線に乗り、俺は腕時計を見てもうすぐ三斗達がシェアハウスに到着する筈だから、スーパーで三斗の頼まれた飲み物や食材を買おうと決め、宝条さんがシェアハウスに帰る事を楽しみにしながら、景色を見続けた。
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