スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆秋山のこと2side荒木仁
side荒木仁

結局朝ご飯の時間は20分しか取れず、2人で歯を磨き、リビングに戻る。

「も〜、信じられません!電車がギリギリです!」
「俺は高坂さんの所に行くから、時間は気にしてない」
「………行ってきます!!」

宝条さんが頬をムスッと膨らませてリビングを出て行き、シェアハウスの玄関がバタンと大きく閉まった音が聞こえ、俺はフッと笑いながら白シャツのボタンを留め、バックを持ってシェアハウスを出た。

電車に乗って藍山駅に着いて改札を出ると姫川に会ったので、2人で四つ葉に向かう。

「昨日の荒木のメッセージに笑わせてもらった」
「“邪魔”されたのは本当だから、そうメッセージをしたまで」

俺はプイっと左に顔を向けると姫川が笑う。

「女といたのかよ」
「……………そう」
「そりゃ高坂が悪いな」
「いつもタイミングが悪すぎだし、次はスマホの電源を切る」

俺がムスッとしながら答えると、姫川は更に笑う。

「笑いすぎ」
「いや、笑うだろ。後でな」
「ああ」

俺は2階の階段で姫川と別れ、3階の専務室に入ると高坂さんと橘さんがいて、あまり橘さんには聞かれたくないな。

「廊下の隅で話をしたいから、いい?」
「良いよ〜」

2人で専務室を出て廊下の隅に行くと、高坂さんは壁に背を預け、腕を組む。

「で、見学の件は駄目だよ」

高坂さんは先手を打つようにきっぱりと言い、イラッとする。

「何が駄目?」
「あのな、中途半端に製作と取材の行ったり来たりは自分のコントロールに慣れていない宝条さんにはキツい。事実、体調不良で入院したろ」
「そうだけど」
「仁の宝条さんを育てたい気持ちは分かる。だけど1人1人に合ったペースでいかないと、いずれ体調不良じゃなくて心も壊れるぞ」
「………」

高坂さんが厳しい表情で言い、宝条さんにはあれだけ自信たっぷりに言ったのに、言い返せない自分がいる。

心も壊れるぞか…、取材を通して原稿作りに役立てればと思ったけど、実際に倒れて入院しているし、シェアハウスに帰ったらもう少し宝条さんと話し合ってみるか。

「宝条さんと話し合ってみる」
「そうしな。お、姫川達が来たから専務室に戻るぞ」
「ああ」

高坂さんが壁から背を離して俺の隣に来て、背中をポンと叩く。

「良いメンバーが集まっているんだ。大事にしよう」
「そうだな」

スポーツ部の出入りは激しいけれど、こんな俺について来てくれるメンバーを大事にしないと駄目だよな。

「秋山も“自分の目”の壁にぶつかっているから、夜に亮二に来てもらう」
「へぇ、三輪っちなら秋山の悩みをボッコボコに砕いてくれそうだね」

高坂さんは楽しそうに笑い、俺もフッと笑い、専務室に戻っていった。
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