スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
お昼を挟んで会議室で仕事を終え、宝条さんは中畑とノートパソコンを使いながら読者アンケートを入力していて、俺はシンクロの取材の為に四つ葉を出る。

電車の中でスマホを取り出し、スポーツ関係の記事を読んで過ごし、練習施設について受付を済ませて、プールに向かった。

見学席にいる井上監督に挨拶し、6月下旬の撮影の事を相談する。

「この日程で練習と演技の撮影を秋山と三輪で、監督と選手の取材は俺が担当します。インタビューは1時間を予定していまして、お伺いしたい内容はこちらです」

俺はバックから書類と撮影の手順を書いた物を井上監督に渡し、本人はじっくりと内容を読むと俺の方に顔を向ける。

「最初はね荒木君の上司?かしら、専務の男性から季刊の説明を受けたとき、どうせ新しい雑誌の話題だけだと思っていたの」

そこから井上監督は俺が季刊後もその先を見据えて1年かけて取材してきたことを話し、時にインタビューの仕方に注意をされたけど、時間をかけてじっくりと耳を傾け、足繁く通いながら監督と打ち解けることが出来たし、その集大成として記事を書けることが嬉しい。

「沢山話しを聞いてくれて、ありがとね。荒木君が1年かけてここに来るのがもうすぐ終わりだと思うと、寂しいわ」
「勿体ないお言葉です。監督と選手の言葉、しっかりと届けます」
「ええ、期待してる。そうそう荒木君が帰るたびに選手達が次はいつ来るんですか?って煩いのよぉ」
「そうなんですか?」
「今日だってそうだけど、荒木君が来るってだけであの子達は前日からスキンケアを頑張っていたし、メイクだって念入りになるの。メイクをする気合は演技に反映しなさいよって」

井上監督は面白そうに話すが、なんでこうも興味を持たれるのか分からない。

「ま、荒木君の取材が終われば静かになるでしょう。大事な時期にスキャンダルだなんて嫌だし、荒木君は選手達ときちんと距離を保ってくれて助かるわ」
「俺はあくまで編集者ですし選手としての話は聞けますが、それ以外は聞けませんし、2人きりはならないのでご安心ください」
「あら?お相手がいるのかしら?」
「…………ええ」

井上監督から聞かれ、間を開けたがこれ以上俺に興味を持たれない様にするならば、宝条さんの名前は伏せて、存在だけは伝えた。

「まぁ!良いじゃない!!荒木君だっていい年齢だし、いてもおかしくないわ。取材してると色んなアプローチがあるけれど、荒木君がきちんと距離を保ってくれて安心したわ。そのお相手の人は荒木君にこんなに思われていて、幸せね」

“幸せね”か…、以前シェアハウスで宝条さんも言っていたな。

『幸せだなぁって』

俺もだよって思わせてくれたのは宝条さんだし、これからもその幸せを傍で噛みしめたいな。

「そうですね。相手の事もあるので、どうか秘密にしていただけるとありがたいです」
「勿論よ。取材が終わってもいつかその人と観に来てね。1番良い席を用意するわ」

井上監督が嬉しそうに話し、その後も2時間程見学と井上監督と選手を交えて取材を続け、そろそろ秋山との待ち合わせに向かわないと。

練習施設を出てスマホで秋山にメッセージを送ると『今向かっています』とあり、亮二も来るからタクシーを拾って待ち合わせの喫茶店に向かった。
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