スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
九条さんが戻ってきて、俺達にお茶と真琴には温かい紅茶を差し出して、また真琴の話しを聞く。

「スマホも持たず手ぶらだったので直ぐに先輩達に連絡が出来なくて…、誰かに気づいて欲しくて必死にドアを叩きました」
「在庫室って目立ちにくい場所にあるし、良く姫川が気づいたよね」

水瀬が姫川の事を褒めるけど、確かに姫川達が気づいてくれなかったらヤバかった。

「1階の手洗いを使いたくて、たまたまだ」
「本当に助けて頂いて、ありがとうございます。先輩達も椅子を使って助けて下さいました」

真琴は少し気分が落ち着いたのか、話す声も安定している。

「今日は遅いし、九条ちゃんが宝条さんを駅まで見送って。ご両親には俺から電話して、明日からでいいから実家で1週間は休むこと!これは専務命令」
「でも…」

高坂さんの話に真琴は渋っていたけど、今回ばかりは俺も高坂さんと同意見だ。

「この状況で仕事は無理だし、きちんと自分の心に向き合って欲しい」
「分かりました…、お先に失礼します」
「私も帰る準備をします」
「ありがとう」

九条さんが荷物を纏め、真琴も紅茶を飲み切ると立ち上がる。

「最後に、閉じ込められた心当たりというか、在庫室に行くまでに誰かに会った事はない?」
「心当たりは無いですが、あっ…」

高坂さんの質問に真琴は答えるけど、何か思い出したようで目が揺れている。

「その顔、心当たりあるな」
「えっと…会議室を出た時に橘さんに…」

姫川の鋭い指摘に真琴はおどおどするけど、『橘さん』の言葉で高坂さんがちらっと俺に視線を送り、また戻して溜め息を吐いた。

「それ以上は言わなくて良いよ。九条ちゃんも遅くまでありがとね、この件が終わったら【もりや】で美味しい定食を皆で食べようね」
「はい、お先に失礼します」

真琴は九条さんに付き添われ編集部を出ていき、ドアが閉まったら4人同時にはぁ…と声が出た。

「姫川達も仕事があったのに、悪いね」
「面倒なことに巻き込みやがって」
「俺は面倒だとは思わないけど、今回ばかりは警察を挟んだほうが良いかもね」

3人はそれぞれ言うけど、俺は心の中で真琴を閉じ込めた人物に対して黒い感情を持ち始める。

「バスケ部の後輩で警察官になった子がいて、今回の場合の対処法を聞いてみるよ。個人の携帯だと問題が出るだろうから、ここはちゃんとした手順で連絡かな」
「じゃあ、早速そうしよう。警察の判断で宝条さんのご両親に連絡して、後は親父だな。防犯の事も話して、スポーツ部のケアは仁に任すぞ」
「ああ、これから田所に連絡する。姫川も水瀬も、巻き込んで済まない。でも皆がいてくれ宝条さんが助かった…、ありがとう」

俺は3人に向けて頭を深く下げる。

「前に雪が降るかもって言った言葉、今分かったぞ」
「でしょ?でも今の時期は雨かもね」
「仁も頭をあげな」

俺が頭を上げると3人は笑っていて、こっちは感謝の気持ちを言ったのに。

「大丈夫。宝条さんはスポーツ部に必要な子だから、1週間はあっという間に過ぎて行くし、たまに見舞いに行こうよ。フルーツの盛り合わせや今川焼を持っていこうかな」
「俺は“三姉妹のお茶会”のお土産で貰ったクッキーにしようかな?あれ、凄く美味しくて、常備したい」
「おっかねえ恋人に食べ過ぎって言われるぞ」
「そうかな?あ〜この間、歯医者に歯間ブラシを使わないとクッキーの欠片が取りにくいって言われた」
「水瀬は次の健康診断で引っかかる可能性があるよ」
「それ、嫌だなぁ」

3人が気を使ってくれるのが嬉しくて、何とか気持ちが安定してきた。

1週間か…、この間の入院の3日より長いけど、真琴の心のケアが優先だし、今は目の前のことをこなそうと、俺は立ち上がった。
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