スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
スポーツ部の皆で階段を上がり3階の会議室に入ると、まだ誰もいなく、がらんとしている。

「いつものようにAとBで向かい合って、製作はBの隣に座ろうか」

田所副編集長が席決めをし、各々座り始め、私は会議室のドアの一番近い端っこの席に座わり、会議室の時計の針が午前9時55分をさそうとすると、会議室のドアが開いて高坂専務と荒木さんが入ってきて、2人は上座の位置に座った。

「おはようございます。全員揃いました」
「忙しいのに、全員に揃ってもらって悪いね」

田所副編集長が高坂専務に私たちが揃ったことを告げると、高坂専務は苦笑する。

「早速だけど、『Scoperta』について休刊の検討があがってるんだ」
「…!…」

苦笑した表情から一変して、険しい表情をした高坂専務の言葉に、先輩達や私も含め誰も言葉を発せなかった。

『Scoperta』が休刊?!ようやく本を創れる仕事に巡り会えたのに、荒木さんや先輩達に出会えたのに!

「私は休刊だなんて嫌です!まだ何も皆さんから学べてないですし、こんなにも素晴らしい雑誌が読めなくなるのは絶対に嫌です!」

高坂専務に思いの丈をぶつけながら、視界がにじむ。泣くな、泣いちゃ駄目だと下唇をキュッと噛む。

「宝条さんはこう言ってるけど、お前はどうなんだ?」
「俺も休刊に反対だ」

高坂専務の問いに、荒木さんは手短に答える。

「俺もはい、そうですかっては無いし、長期の結果よりも最低でも3か月で見返す位にして欲しい」
「分かった。この後進行の確認をして、報告する」
「オッケー。頭の固いおっさん達を相手に話すのは疲れるけど、上手く付き合って話してくるよ。みんな、先に出るね」

高坂専務は荒木さんとやり取りを終え、会議室を出ていき、荒木さんが席から静かに立ち上がる。

「皆がここまでやってくれているのに、休刊の対象になってすまない」

荒木さんが深く頭を下げる姿に胸が痛い…、やがて荒木さんがゆっくりと頭を上げ、小さく息を吐く。

「今から3か月分の進行の確認に入るよ。中畑はホワイトボードに進行スケジュールを書いて」
「はい」
「田所と佐藤はそれぞれの班の3か月分の記事のテーマを付箋に書き出して」
「分かりました」
「すぐやります」
「本当は編集部でこの作業をしたいけど、他の部署に詮索されたくないから、製作の皆は荷物が増えるけど、プリンターと備品類をこの会議室に運ぶよ。皆も3か月この会議室で過ごすから、各自の荷物を持ってきて。一旦、解散」
「はい!」

次々と出る指示に皆同時に返事をし、会議室を出て、2階に向かう途中、女性の先輩が隣に来て一緒に歩く。

「さっき会議室で言ってくれたの、嬉しかった」
「勢いのまま言っちゃいました」
「ううん、本当に嬉しかったよ。頭の固いおっさん達に素晴らしい雑誌を読ませよう!」
「はい!」

先輩は高坂専務の言葉を引用して、お互い顔をみあわせて笑う。

絶対に休刊になんてさせないんだから!!
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